欧州委員会、独自動車3社に競争法違反警告、排ガス浄化技術に関する談合の疑いで

欧州委員会は2019年4月5日、ドイツのBMW、ダイムラー、フォルクスワーゲングループ(VW、アウディ、ポルシェ)の3社が、排ガス浄化技術の開発と展開を制限するための談合によりEU競争法に違反したとして、これら3社に異議告知書(Statement of Objections)を送付したことをプレスリリースで発表した。

 

背景

本件については、欧州委員会は2017年10月に初動調査を、そして2018年9月には詳細調査を開始していた。なお、本調査は競争法違反の嫌疑に限定したものであり、環境関連法規違反の可能性は調査対象には含まれていない。また、違法デフィートデバイス関連などの他の調査案件とも無関係である

 

欧州委員会の予備的見解

4月5日のプレスリリースの中で欧州委員会が示した予備的見解(preliminary view)のポイントは、以下の通りである。

  • 同3社は、欧州経済領域(EEA)内で販売された新しいディーゼル乗用車とガソリン乗用車の排ガス浄化システム(emissions cleaning technology)に関連して、2006年から2014年にかけて、その開発と展開を制限して技術革新競争を抑制するための談合を行っていた。
  • 談合の対象と見られているのは、以下の二つのテクノロジーである。
    • ディーゼルエンジン向け尿素SCR(selective catalytic reduction)システム:

同システムは、排気ガスに対して尿素水(AdBlue)を噴霧することにより、ディーゼル乗用車からの窒素酸化物(NOx)排出量を削減するものである。3社は2006年~2014年の間、AdBlue用量戦略、AdBlue用タンクのサイズ、そして補充が必要な走行距離についての申し合わせを行った。その際、こうした方法によってAdBlue消費量と排気ガス浄化効果を抑制するという認識が共有されていた。

  • ガソリンエンジン向けパティキュレートフィルターOPF(’Otto’ particulate filters):

OPFは、ガソリン直噴エンジン車の排気ガスから粒子状物質排出量を削減するためのフィルターである。3社は2009年~2014年の間、新車モデルへのOPF搭載を回避、あるいは少なくとも引き延ばしていた。

  • 3社の行動が事実であることが確認されれば、これはEU競争法に違反すると見られる。EU競争法は、製品の品質改良やイノベーションを目的とした企業間協力を認めているが、3社の行動はこれには当てはまらない.

 

以上の内容が、異議告知書としてBMW、ダイムラー、VWの各社に送付された。ちなみに異議告知書は、EU競争法違反関連の欧州委員会による調査における正式な手続きの一つである。これを受領した関係当事者は、内容を精査し、書面で回答し、さらに口頭審理を要請することができる。BMW、ダイムラー、VWの3社もこれから、こうした抗弁権を行使することができるが、その後に欧州委員会がEU競争法違反を示す十分な証拠があると結論した場合、当該企業には年間の連結売上高の最大10%の制裁金が科される可能性がある。

 

今後の展開とスケジュール

欧州委員会が実施する競争法関連の調査については、特に法定の期限はない。本案件(case number:40178)に関する詳細は、以下の欧州委員会ウェブサイト(英語)で閲覧可能である。http://ec.europa.eu/competition/elojade/isef/case_details.cfm?proc_code=1_40178

 

関連文書

2019年4月5日付け欧州委員会プレスリリース:

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-19-2008_en.htm