独仏政府が電気自動車向け電池開発で協力、官民の「エアバス・バッテリー」プロジェクトに共同投資

欧州で独仏を中心とする官民の「エアバス・バッテリー」プロジェクトの実現が具体化している。計画では、第4世代電池の開発を中心に、独仏に3つの電池工場が建設される。

 

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電気自動車(EV)向け電池の欧州企業による大規模生産を目指すプロジェクト「エアバス・バッテリー」は2018年12月にドイツとフランスにより開始されたが、同プロジェクトが具体化してきている。ドイツのペーター・アルトマイヤー経済エネルギー相とフランスのブリュノ・ル・メール経済・財務相は2019年5月2日、パリで記者会見を開き、同プロジェクトに共同投資していく意向を明らかにした。

この記者会見にはマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会副委員長も同席し、 「欧州委員会としては、同プロジェクトが重要な欧州共通利益プロジェクト(IPCEI:Important Project of Common European Interest)であることを認め、最高12億ユーロ(約1482億円)の公的資金の注入が可能となる見込みである」と語った。

 

同プロジェクトは、EV向けの第4世代電池の開発を中心に、鉱物資源の抽出から電池のリサイクルまでを含むサプライチェーンを構築することを目的としている。プロジェクト名は、欧州の主要国家が共同出資した航空機製作会社エアバスの名前を取って名付けられた。

コンソーシアム形式で運営され、フランスの電池会社サフト社(石油・トータル社の子会社)を筆頭にプジョーシトロエンPSAグループ、ドイツのオペル社など、独仏の企業を中心に、イタリア、ベルギー、ポーランド、オーストリア、フィンランドなどを含む30社以上の自動車・エネルギー企業が参画するものと予想される。

まず、パイロット電池工場がフランス国内に2020年に建設され、200名の雇用創出が計画されている。続いて2022~2023年を目処に、鉱物資源の抽出、セルの生産、電池の組立て、電池の車両への搭載、電池のリサイクルなどの工程を統括させた電池工場がドイツとフランスにそれぞれ建設される。

電池工場の建設には、50億ユーロ(約6173億円)~60億ユーロ(約7408億円)が必要であると試算されており、うち、40億ユーロ(約4939億円)は民間産業セクターからの投入が期待されている。計画では、2022~2023年までは改善型液体電解質を使用した電池が生産され、2025~2026年からエネルギー密度のより高い全固体電池の生産が開始される。

 

なお、フランス政府は今後5年間で電池生産に関わるプロジェクトに7億ユーロ(約864億円)を支出することを決定、ドイツ政府は、同じ分野に10億ユーロ(約1235億円)を投資する用意があると発表している。

 

欧州は新世代電池を通じて電池市場での技術産業上の遅れを挽回したいと考えている。最近の調査によると、今後2030年までに世界のEV向け電池市場は450億ユーロ(約5兆5559億円)に達すると言われており、欧州の目標は、市場における競争力を高め、占有率を現在の3%から20~30%に増強することである。