ドイツ連邦経済省、エネルギー転換に向けた社会実験プロジェクト20件を選出、重点は「水素」

ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWi)は2019年7月18日、新規アイデアコンペティション:「レアルラボーレ・デア・エナギーヴェンデ(Reallabore der Energiewende)」(EnviX仮訳:実在するエネルギー転換研究所、以下「RdE」と言う)の入選プロジェクトを発表した。本コンペの重点テーマは、「低炭素水素テクノロジー」に置かれており、この他に「エネルギー貯蔵」及び「エネルギー最適化建物」も主要テーマとなっている。

 

レアルラボーレ・デア・エナギーヴェンデ(RdE)とは

BMWiによると、RdEは、ドイツ連邦政府のエネルギー研究計画の中の新しい柱の一つであり、実際的な条件の下で、かつ産業規模において、将来性の高いエネルギー関連テクノロジーの実験を行うものである。具体的には、企業(企業連合)が、地域において新規テクノロジーを実際のオペレーションの形でテストし、学術・研究機関のパートナーとの協力の下でエネルギーシステムや社会の相互作用を分析することによって、イノベーションの実践を迅速に進めるための貴重な経験を集める。さらに、長期的に競争力を持つビジネスモデルの実現に向けて、法的条件をどのように整備すればよいかと言う点も、RdEの結果から導かれるとしている。

今回のコンペでは全部で90件のプロジェクトの応募があり、この中から20件が選出された。BMWiは、これらのプロジェクトを助成するために年間総額1億ユーロ(約121億円)を拠出する。これに加えて連邦内閣は、「2019年5月22日のStrukturstärkungsgesetz(EnviX仮訳:地域産業構造強化法)」の基本事項の中で、「産業構造転換地域(Strukturwandelregionen)」(注:脱石炭の影響を特に受ける、かつての褐炭産業地域。ドイツ東部のラウジッツなど)で実施されるRdEを対象として、2億ユーロの助成を行うことを既に決議している。選出された20件のうち10件が、この産業構造転換地域で実施されるRdEに該当する。

 

入賞プロジェクトの一部:

  • ニーダ―ザクセン州の塩坑でのCO2貯留システム
  • バーデン=ヴュルテンベルク州Grenzach-Wyhlenの水力発電所で生産された電力を使った、大規模な電気分解プロセス
  • ハンブルグ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン、メクレンブルク=フォアポンメルンの3州にまたがるRdEでは、エネルギー系統の総合的転換の実験を行う。再生可能エネルギー由来の水素を、燃料自動車向け供給スタンドで提供するだけでなく、天然ガスに混ぜて燃焼器に投入するなど。

 

今後の展開とスケジュール

  • ペーター・アルトマイヤー経済相は入選プロジェクトの発表に際し、「我が国は、水素テクノロジーにおいて世界1位を目指す。同テクノロジーには、エネルギー転換と気候保全に加え、新規雇用の面においても甚大なポテンシャルがある」と話した。さらにBMWi発行のプレスリリースには、「応募プロジェクトのいくつかは、現行の助成レジームでは実現不可能である。このため、経済省は助成枠組みの拡張に向けて動き出した」と記述されている。これは、経済省が財務省に助成予算の引き上げを要請する意向であると解釈できる。
  • ドイツ連邦政府は、年内に「水素戦略」を決議することになっており、RdEは、同戦略の主要な構成要素の一つとなる予定。

 

関連文書(すべてドイツ語):

  • BMWiプレスリリース:

https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Pressemitteilungen/2019/20190718-altmaier-verkuendet-gewinner-im-ideenwettbewerb-reallabore-der-energiewende.html

  • 入賞プロジェクトの概要:

https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Downloads/P-R/reallabore-der-energiewende-gewinner-ideenwettbewerb-steckbriefe.pdf?__blob=publicationFile&v=7

  • リアルラボ所在地マップ:

https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Downloads/P-R/reallabore-der-energiewende-karte.pdf?__blob=publicationFile&v=8