ドイツ国内では、年内に10の都市でディーゼル車等の乗り入れ規制が導入される。ただし、走行禁止区域内であっても、
- Euro 6適合車、あるいは
- 実走行時の窒素酸化物(NOx)排出量が270 mg/kmを超えないEuro 4/5適合車
は、走行禁止から除外されることになっている。そして、Euro 4/5適合車が(b)の要件を満たすには、‘NOxMS-Pkw‘と呼ばれる高性能NOx低減システム(以下の注を参照)による対応が必要である。これには、ハードウェア追加装備またはソフトウェア・アップデートによる技術的変更と、技術的変更なしに初期状態で適合させておく方法がある。
注)NOxMS-Pkwとは:’Stickoxid-Minderungssystem mit hoher Minderungsleistung zur Einhaltung eines Emissionswerts von weniger als 270 mg/km NOx für Kraftfahrzeuge mit Selbstzündungsmotor’の略。「ディーゼル自動車がNOx最大排出量270 mg/kmに適合できるようにするための性能向上型NOx低減システム」のこと。
ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省(BMVI)は2019年7月12日、「NOxMS-Pkwに対する要求事項」(文末関連資料(2))を公示した。同文書が適用されるのは、以下に該当する、Euro 4あるいはEuro 5のディーゼル車である。
- N1カテゴリー(技術的最大許容質量が2800kg以下)
- M1あるいはM2カテゴリー(いずれも技術的最大許容質量の制限はなし)
そして、ドイツ連邦自動車庁(KBA)は2019年7月26日、道路交通規則(StVZO)第22条に従い、かつ上記の「NOxMS-Pkwに対する要求事項」に関連するものとして、ドイツ・バンベルグ市のDr Pley SCR Technologie GmbH 社(本社はルーマニア・ブカレスト市。詳細は、文末関連資料(4)参照)の、Euro 5ディーゼル車向け排ガス浄化装置(ハードウェア)に型式認証(ABE:Allgemeine Betriebserlaubnis)を発行した。乗用車向け排ガス浄化装置としてABEを取得したのは、同製品が初めてである。なお、本ABEはVolvoモデル向け装置にのみ有効であるが、Dr Pley社によると、まもなくDaimler モデル対応製品とBMWモデル対応製品にもそれぞれABEが発行される予定になっている。
ドイツ連邦政府は、各自動車メーカーに、こうしたハードウェア追加装備の費用を負担することを求めている。一方、ドイツメーカーは長らく、ハードウェア追加装備ではなくソフトウェア・アップデートによる対応を要望してきた。しかし、そうこうするうちにフォルクスワーゲンとダイムラーは、ディーゼル乗用車1台につき3000ユーロ(約36万円)を上限に、ハードウェア追加装備費用を負担することを決定した(VolvoとBMWはまだこれを拒否している)。なお、Dr Pley社製の排ガス浄化装置の価格は、取付け費用も含めて約3000ユーロ(同社報告)。
関連資料(いずれもドイツ語)
- ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省(BMVI):ハードウェア追加装備全般に関する情報(2019年7月29日更新)
- ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省(BMVI):NOxMS-Pkwに対する要求事項(2019年7月12日)
https://www.bmvi.de/SharedDocs/DE/Anlage/G/technische-anforderungen.pdf?__blob=publicationFile
- ドイツ連邦自動車庁(KBA):「乗用車向けNOx低減システム」を対象とした型式認証発行状況
- Dr Pley SCR Technologie GmbH 社ウェブサイト