欧州委員会、対ドイツ条約違反手続きをさらに一歩進める――代替燃料インフラ配備不備で

欧州委員会は2019年3月7日、ドイツ連邦政府に対し、「代替燃料補給インフラ配備に関する指令2014/94/EU」(以下、「AFID」、Alternative Fuels Infrastructure Directive)の国内法化を完遂するよう厳重に注意する内容の、reasoned opinion(理由を付した意見)を送付したと発表した。これは、EUの正式な条約違反手続きのステップであり、ドイツ政府が本件で欧州委員会から注意を受けるのは、2018年6月に続いて今回で二度目である。

 

AFID

2014年10月28日に公布され、同年11月17日に発効したAFIDは、代替燃料インフラに関わるEUの共通基準、そして域内でエレクトロモビリティを実現するための基本的な条項を定める指令であり、欧州委員会はこれを「EU域内市場が機能する上で、重要な役割を担っている」としている。同指令は、加盟国に対し、2016年11月18日までに同指令を国内法に置き換えると共に、代替燃料を供給する最低限のインフラ設置に関する目標を定めた「国内政策枠組み(national policy framework)」を欧州委員会に提出することを義務付けている。

 

ドイツの対応

ドイツ連邦政府は、このAFIDの定めに従って期限内に国内政策枠組みを策定、提出した。この中で、パワートレイン転換を見据えたインフラ整備向けとして約10億ユーロ(約1,269億円)の投資計画を提示し、これを実施している。その内訳は、以下の通りである。

  • 助成プログラム「エレクトロモビリティ充電インフラ」(Ladeinfrastruktur Elektromobilität):3億ユーロ
  • 助成プログラム「エレクトロモビリティ・オン・サイト」(Elektromobilität vor Ort):1億4000万ユーロ
  • ドイツ水素・燃料電池技術国家技術革新プログラム(NIP):2億4700万ユーロ
  • モビリティと燃料戦略:2億6800ユーロ

 

欧州委員会が問題視する点

ドイツの “WELT“ 紙(2019年3月7日発行)の報道によると、欧州委員会がドイツ政府に行った注意の対象は、投資計画の内容やインフラ構築の遅れなどではなく、同国が実施するインフラ整備が、「欧州規格に準じた、電力供給及び水素供給ステーションのための技術仕様」を欠いている上に、「燃料と自動車の適合性に関するEU規格に準じた情報提供」も十分ではないことから、他の加盟国のドライバーがこれらをほとんど利用できない点であると言う。

 

今後の展開とスケジュール

ドイツ連邦政府は、欧州委員会によるreasoned opinionに対し、向こう2ヵ月以内に回答することができる。欧州委員会はその後、ドイツ連邦政府の対応を不十分と認めた場合、本件を欧州司法裁判所に提訴することができる。