米国におけるエコカー政策、関連規制の概要をご紹介するページです。
2005年エネルギー政策法(助成プログラムの所轄規定・税控除)
2007年エネルギー自立・安全保障法(CAFE基準とPHEV・EV関連技術の助成プログラム設立について)
先進技術自動車(ATV)および代替燃料インフラ製造インセンティブ
<カリフォルニア州>
ZEV規制:一定割合のZEV販売義務
【関連法令】
2005年エネルギー政策法
“Energy Policy Act of 2005”
【概要】
米国では、1999年から2000年にかけての石油・天然ガス価格の高騰、及び、2000年から2001年にかけてのカリフォルニア州での電力危機、それらに由来する経済への影響などを背景に1992年エネルギー政策法よりも更に包括的なエネルギー法案策定の気運が高まっていいました。2005年に法制化されたこの「2005年エネルギー政策法」は、米国エネルギー政策の根幹をなす法律であり、18篇から構成されています。
電気自動車等の代替燃料車、先進自動車に直接的に関連する部分は、第7篇「自動車および燃料」、第8篇「水素」、第13篇「エネルギー優遇税」、第15篇「エタノール・自動車燃料」などが挙げられます。なお、エネルギー優遇税に見られる税控除などは1986年内国歳入法も合わせて参照する必要があります。以下には一例を記すものとします。
<第7篇の関連事項>
ハイブリッド自動車、先進自動車の普及促進のためのプログラムや助成プログラムをエネルギー省所轄当局が行うことを規定しています。
<第13篇の関連事項>
一定の燃費基準を満たした燃料電池自動車、高燃費車、ハイブリッド車、代替燃料車を購入した場合、税の減免措置の提供について規定しています。
例:14000ポンド以下のハイブリッド自動車:税控除上限額は7500ドル/課税年度
輸送用代替燃料の充填所を設置した場合、税の減免措置を提供します。
CAFE基準とPHEV・EV関連技術の助成プログラム設立について
【関連法令】
2007年エネルギー自立・安全保障法
‘‘Energy Independence and Security Act of 2007’’
【概要】
EISAは、エネルギー自給率とエネルギーの安全保障の向上を目的とした法律である。エネルギー効率改善の対象には、製品をはじめ、建物や自動車にも言及されています。合計16篇からなる法律で、関係が大きいものには、第1篇「燃費改善を通じたエネルギーセキュリティ」が挙げられます。
<第1篇の本稿関連事項>
CAFE基準(企業別平均燃費基準)
当局は、州政府や地方自治体、都市交通当局、企業、非営利団体らと共同で、プラグインハイブリッド車および新興電気自動車技術の使用を奨励する助成プログラムを設立しなければならないと規定されています。
ほか、米国内でのプラグインハイブリッド車等およびその部品の生産支援や、ローン保証など様々な支援策が規定されています。
【関連法令】
2009年米国復興・再投資法
‘‘American Recovery and Reinvestment Act of 2009’’
【概要】
この法律は次の項目を目的として掲げています。雇用創出および経済回復の促進、不況により影響受けたものへの支援、科学および健康分野の先進技術を刺激することによる経済効率性の増大に必要な投資の提供、交通、環境保護およびほかのインフラへの投資により、中長期的な経済便益の享受など。エコカー関連部分を一部紹介します。
先進電池および部品への助成、先進リチウムイオン電池やハイブリッド電気システム、部品メーカー、ソフトウェア設計者を含め、米国内で生産される先進的なバッテリー生産施設への助成:20億ドル
先進技術自動車製造ローンプログラム:1000万ドル
などの各種資金の使い道や、追加的な税控除の規定を設けています。
先進技術自動車(ATV)および代替燃料インフラ製造インセンティブ
【関連政策】
先進技術自動車製造ローンプログラム
“Advanced Technology Vehicles Manufacturing (ATVM) Loan Program”
【概要】
ATV製造ローンプログラムを通じて、製造者は対象となるATVや、ハードウェアおよびソフトウェア関連を含め、ATV部品や代替燃料インフラの米国内での設備変更、施設拡大、施設設立の費用の3割を上限に融資を受ける資格を得ることができます。対象となる部品とは、ATV用に設計され、設置され、DOEが定める要件を満たすことを目的としたものが対象となります。
【関連法令・政策】
HOVレーン適用除外
“High Occupancy Vehicle (HOV) Lane Exemption”
【概要】
対象となる代替燃料自動車(AFV)やプラグイン・ハイブリッド車(PEV)は、米国内のHOVレーン(High Occupancy Vehicle Lane)の要件の適用除外が認められます。HOVレーンとは、規定人数以上が搭乗している車のみ走行可能な車線のことで混雑や渋滞緩和策として講じられている政策です。HOVレーンを走行するにはEPAの認証を受け、適切なラベル表示を行う必要があります。
AFVとPEVのHOVレーン適用除外は2025年9月30日に失効する予定となっている。
【関連法令・政策】
国家代替燃料回廊(National Alternative Fuel Corridor)
【概要】
連邦政府と民間部門の協働の取り組みで、電気自動車ドライバーが自宅や職場で、また道路で充電する機会の提供を確実なものとすることができるとしています。今回の告知では省庁や州、地方、そして民間部門が以下のような目標を共有して、その達成を目指すための継続的なパートナーシップを明示するものとして位置づけられています。
35州にわたり約2万5000マイル(約4万200km)をカバーすることとなります。これにより、電気自動車ドライバーは50マイル(約80km)毎に充電設備(計画中を含む)があると予期することができるようになります。
【関連政策】
クリーン・シティ(Clean Cities)
【概要】
「クリーン・シティ」のミッションは、交通セクターにおいて化石燃料の使用を低減させる取組みを採用するローカルなイニシアチブをサポートすることで、米国におけるエネルギー面、経済面、環境面でのセキュリティを促進させていくことにあります。100近い自主的な連合ネットワークを通じて、官民パートナーシップを結び、代替燃料および先進自動車の活用、混合燃料の活用、燃費の改善、ハイブリッド車の活用、アイドリング低減などに取り組んでいます。「クリーン・シティ」は財政的な支援や、技術支援プロジェクトについての情報を提供し、そのデータベースを管理・更新しています。
【関連政策】
国家クリーン・ディーゼル・キャンペーン(NCDC)
“National Clean Diesel Campaign”
“Diesel Emission Reduction Act (DERA)”
【概要】
国家、州、地域のステークホルダーを巻き込んで、ディーゼルエンジンから排出される汚染物質を低減するために設けられた取組みとなります。既存のディーゼル・フリートに関するプログラム、クリーン・ディーゼルエンジンおよび燃料に関する規制、地域の協働などを含んだ取組みです。根拠法令となるDERAは、2005年エネルギー政策法の一部という位置づけです。
他にも米国では州レベルの取組みを含め多数のプログラムが展開されています。特にカリフォルニア州の取組みは世界でも非常に先進的な取組みとして評価され、注目を集めています。代表的な例として、ZEV規制として知られる取組みを紹介します。
【関連法令・政策】
ゼロ・エミッション自動車(ZEV)プログラム
“Zero Emission Vehicle (ZEV) Program”
【概要】
州当局は、特定の条件下で指定の排ガスを排出しない指定の年式の乗用車、軽量トラック、中型車を認定しています。この基準(通称ZEV規制)は、指定の自動車およびトラックを生産する製造者は、カリフォルニア州で販売する自動車のうち、一定比率を認定されたゼロ・エミッション自動車の販売としなければならないと規定するものです。2015-2017年の最低ZEV要件(minimum ZEV requirement)は14%でした。1990年に動き出したこの規制動向は、いまや他の州でも採用されるなど、広がりを見せています。
このほか、カリフォルニア州では「クリーン自動車払戻しプロジェクト」や「義務的充電設備ビル基準」、「ステッカー・プログラム」や「走行レーン規制」など、種々の助成プロジェクトに加え、多種多様なプログラムおよびインセンティブが展開されています。
エネルギー省(DOE)
https://www.energy.gov/
環境保護庁(EPA)
https://www.epa.gov/
代替燃料データセンター(AFDC)
https://www.afdc.energy.gov/