ドイツ

ドイツにおけるエコカー政策、関連規制の概要をご紹介するページです。

ドイツでは、2010年5月3日、アンゲラ・メルケル連邦首相の主催により、国内における官民の代表を集めた「電気自動車フォーラム」が首都ベルリンで開催され、7つのワーキングループから成る「ドイツ・エレクトロモビリティ国家プラットフォーム(NPA:Nationale Plattform Elektromobilität)」が始動しました。これを皮切りとして、「2020年までに国内の電気自動車台数を100万台へ拡大する」 という政府目標の下、国を挙げてエレクトロモビリティを推し進めるべく数々の政策を打ち出してきています。代表的なものを、以下にリストアップしています。

ドイツ連邦政府によるエレクトロモビリティ政策の基本方針

電動車を対象とする購入奨励金=「環境ボーナス(Umweltbonus)」の支給

道路交通法上の電動車の優遇措置

税制上の電動車の優遇措置

充電インフラ設置助成

公共利用可能なEV充電スタンドの、安全で相互運用可能な構築と運営のための最低技術要件の設定

低排出トラック向け助成

第二次 水素・燃料電池技術国家革新技術プログラム2016-2026(NIP 2)

ドイツ連邦政府によるエレクトロモビリティ政策の基本方針

【関連規制および政策】

1) 2011年5月の「エレクトロモビリティ政府プログラム」
“Regierungsprogramm Elektromobilität”

2) 2016年5月18日の「エレクトロモビリティ施策パッケージ」

3) 新政権の基本方針を示す、2018年3月14日の「連立協定書(Koalitionsvertrag)」

【開始時期】2011年5月

【概要】
1)は、2011年5月当時、国内にわずか2,300台であったEV登録台数を、2020年までに100万台に引き上げることを目標として、一連の対策をまとめた62ページに及ぶ文書。研究開発投資、税制上の優遇措置、道路交通法上の優遇措置、公共調達など。

2) は、総額10億ユーロ弱の予算を擁する内容で、①EV購入補助金、②充電インフラ拡充、③公共調達を中心とする内容。

3) には、電動のタクシー及び小型商用車向け購入補助金の引き上げ、充電ネットワークの拡充、EVの社用車税優遇、商業利用に供するEV向け特別減価償却などの施策が盛り込まれた。


電動車を対象とする購入奨励金=「環境ボーナス(Umweltbonus)」の支給

【関連法令・文書】
連邦経済省による2016年6月29日の通達:電動自動車の販売促進に向けたガイドライン(環境ボーナス)
“Bekanntmachung Richtlinie zur Förderung des Absatzes von elektrisch betriebenen Fahrzeugen”

【開始時期】2016年5月

【概要】
EV購入者には4000ユーロ(約45万円)、そしてPHEV購入者には3000ユーロ(約34万円)のボーナスが支給されます。全体の予算として、およそ自動車30万~40万台分の支給額に相当する12億ユーロ(約1336億円、連邦政府と自動車業界が折半)が確保されており、支給期間は、2019年末を期限として同予算がなくなるまで。支給業務を担当するのは、連邦経済・輸出管理庁(Bafa:Bundesamt für Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle)。


道路交通法上の電動車の優遇措置

【関連規制および政策】

エレクトロモビリティ法(EmoG:Elektromobilitätsgesetz)
“Gesetz zur Bevorrechtigung der Verwendung elektrisch betriebener Fahrzeuge”

【開始時期】2015年6月(2030年6月30日までの有効期限付きで施行)

【概要】
同法の発効に伴い、各地方自治体は、電気駆動自動車を対象に、特に駐車場及びバス専用レーンの利用における優遇措置を採用することができるようになりました。優遇措置の対象と認められているのは、電気モード走行での航続距離が40キロメートル以上、あるいは1キロメートル走行あたりの二酸化炭素排出量が最大で50グラムという条件を満たす、BEVおよび外部電源を使って充電可能なHEVです。


税制上の電動車の優遇措置

【関連法令】

2016年11月7日の道路交通におけるエレクトロモビリティの税制上の優遇措置に関する法律
“zur steuerlichen Förderung von Elektromobilität im Straßenverkehr”

自動車税法(Kraftfahrzeugsteuergesetz)

所得税法(Einkommensteuergesetz)

【開始時期】2016年11月

【概要】
<自動車税法関連>
それまでBEVは、2016年1月1日から2020年12月31日の間の初回登録から5年間は自動車税を免除されていたが、同措置を2016年1月1日に遡及して10年間に延長。

<所得税法関連>(2017年1月1日~2020年12月31日まで適用)
雇用者が被雇用者に提供する以下の福利厚生は、免税。
①雇用者の事業所内あるいは関連企業内におけるEVあるいはHEVの充電、および
②一時的に私的な利用に供される、事業所に帰属する充電装置


充電インフラ設置助成

【関連法令・政策】

充電インフラストラクチャ―連邦政府プログラム(Bundesprogramm Ladeinfrastruktur)
⇒ 詳細は、2017年2月13日のドイツ連邦交通省(BMVI)によるドイツにおける電動車向け充電インフラ助成ガイドライン通達(ドイツ語)を参照する必要あり
“Bundesministerium für Verkehr und digitale Infrastruktur”

【開始年月】2017年3月

【概要】
国内全土に1万5000台のEV用充電器設置を目標とした、民間投資者や自治体を対象とした補助金支給プログラムです。総予算は30億ユーロ(急速充電器向け20億ユーロ+標準充電器向け10億ユーロ)。条件は、公共利用可能な充電器であることと、再生可能エネルギー由来の電力を使用する充電器であること。なお、申請処理を行う連邦行政サービス庁(BAV)では期間を設定して申請を受け付けているが、2017年10月30日の第二回受付期間終了以降、2018年6月時点で、次回申請受付期間は未定です。


公共利用可能なEV充電スタンドの、安全で相互運用可能な構築と運営のための最低技術要件の設定

【関連法令】

充電スタンド省令(LSV:Ladesäulenverordnung)
“Verordnung über technische Mindestanforderungen an den sicheren und interoperablen Aufbau und Betrieb von öffentlich zugänglichen Ladepunkten für Elektromobile (Ladesäulenverordnung – LSV)”
※EU代替燃料補給インフラ配備に関する指令2014/94/EUを国内法に置き換えたもの

【開始時期】2016年3月

【概要】
LSVの改正法「充電スタンド省令を改正するための2017年6月1日の第一省令(Erste Verordnung zur Änderung der Ladesäulenverordnung vom 1.Juni 2017)」(通称:LSV II)が2017年6月14日のドイツ連邦官報(BGBl.S.1520)で公布され、その翌日に発効した。

LSV IIの最大のポイントは、充電スタンドの経営者に対し、EV利用者が事前契約なしで必要な時だけ充電サービスを利用できるようにすることを義務付けている点です(第4条「一時的充電(Punktuelles Aufladen)」)。すなわち、充電スタンドの経営者は、これまでのように電力供給契約締結を充電サービスの利用条件にすることができなくなり、各充電スタンドで、以下に掲げる4つのバリエーションのいずれかによる充電サービス提供を可能にしておかなければなりません。

  • 無料の電流出力 <認証不要>
  • 充電スタンド直近地点における現金支払いの対価としての電流出力 <認証不要>
  • 一般的なカード決済あるいは充電スタンド直近地点における決済による支払いの対価としての電流出力 <キャッシュレス決済に必要な認証を使用>

一般的なオンライン決済による支払いの対価としての電流出力 <キャッシュレス決済に必要な認証を使用>


低排出トラック向け助成

【関連法令・政策】

ドイツ連邦交通省が2018年6月4日に「道路貨物輸送事業者におけるエネルギー高効率および/またはCO2低排出の大型商用自動車助成に関するガイドライン」を提出。
“Richtlinie über die Förderung von energieeffizienten und/oder CO2-armen schweren Nutzfahrzeugen in Unternehmen des Güterkraftverkehrs”

【開始年月】2018年夏

【概要】
7.5t以上の圧縮天然ガス(CNG)、液化天然ガス(LNG)、電動の貨物輸送用トラック(新車)を対象とする、新たな助成制度です。7月中にも連邦貨物輸送庁(BAG:Das Bundesamt für Güterverkehr)での申請受付が開始される見通し。助成金額はパワートレインの種類によって異なりますが、例えば電動トラックでは、12t以下が1万2000ユーロ(約154万円)、12t以上は4万ユーロ(約513万円)となっております。2018年の予算は総額1000万ユーロ(約12億8400万円)。


第二次 水素・燃料電池技術国家革新技術プログラム2016-2026(NIP 2)

【関連法令】

プログラム開始に関する公示(2017年3月1日付連邦官報、ドイツ語、全4ページ)

【開始時期】
すでに2006年から2016年の間、水素及び燃料電池技術の発展を目的とする産官協力型プログラム「ドイツ水素・燃料電池技術国家革新技術プログラム(NIP)」が実施され、連邦政府とプログラム参加企業の折半により、14億ユーロ(約1733億円)の資金が投じられてきました。NIP 2は、この後継プログラムにあたります。

【概要】
2019年末までの資金として約2500万ユーロ(約31億円)を投じ、以下を対象とする助成が行われます。

  • 燃料電池を使った駆動装置を搭載する輸送機器(道路、線路、水路)ならびに航空機。また、これらの輸送機器の運転に必要な燃料補給・整備用インフラ
  • 再生可能エネルギー由来の電力を動力源とする、水素製造用の電気分解装置
  • 物流部門で使用される、燃料電池駆動の特殊輸送機器。また、同機器の運転に必要な燃料補給インフラ
  • 船舶、自動車及び航空機のオンボード電源として使用される、燃料電池ベースのコジェネレーション
  • 主要インフラ、あるいは電力網から隔離されているインフラを対象とした、自給自足型の燃料電池ベース電気供給システム

ドイツ・エレクトロモビリティ国家プラットフォーム(NPA:Nationale Plattform Elektromobilität)
http://nationale-plattform-elektromobilitaet.de/
連邦政府、産業界、そして研究機関が連携してエレクトロモビリティ普及を推進するために2010年5月に発足した政府諮問機関。≪駆動技術≫、≪バッテリー技術≫、≪インフラ≫、≪規格統一≫、≪材料とリサイクル≫、≪後継者育成・能力開発≫、≪枠組み条件≫の7つのワーキンググループを擁し、様々な政策提言を行っています。

ドイツ連邦経済・エネルギー省(BMWi)
英語:https://www.bmwi.de/Navigation/EN/Home/home.html
ドイツ語:https://www.bmwi.de/Navigation/DE/Home/home.html
助成データバンク:
http://www.foerderdatenbank.de/
エレクトロモビリティ関連の助成全般

ドイツ連邦交通・デジタルインフラストラクチャー省(BMVI)
英語:http://www.bmvi.de/EN/Home/home.html
ドイツ語:http://www.bmvi.de/DE/Home/home.html
エレクトロモビリティ関連の助成全般

ドイツ水素・燃料電池技術機構(NOW:Nationalen Organisation Wasserstoff- und Brennstoffzellentechnologie)
英語:https://www.now-gmbh.de/en/about-now
ドイツ語: https://www.now-gmbh.de/de/ueber-now
<連邦政府委託>
規制・政策名8「第二次 水素・燃料電池技術国家革新技術プログラム2016-2026(NIP 2)」の実施
<BMVI委託>
– エレクトロモビリティ関連の助成ガイドライン
– 充電インフラ
– モビリティと燃料に関する戦略(MKS)

ドイツ連邦経済・輸出管理庁(BAFA:Bundesamt fuer Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle)
http://www.bafa.de/DE/Home/home_node.html
電動車を対象とする購入奨励金=「環境ボーナス(Umweltbonus)」の支給

ドイツ連邦電気・ガス・通信・郵便・鉄道庁
(BnetzA:Bundesnetzagentur für Elektrizität, Gas, Telekommunikation, Post und Eisenbahnen)
英語:https://www.bundesnetzagentur.de/EN/Home/home_node.html;jsessionid=30B9EB6C57AE62C2B74BBF4BB330E80C
ドイツ語:
https://www.bundesnetzagentur.de/cln_111/DE/Home/home_node.html
規制・政策名6:公共利用可能なEV充電スタンドの、安全で相互運用可能な構築と運営のための最低技術要件の設定

連邦貨物輸送庁(BAG:Das Bundesamt für Güterverkehr)
https://www.bag.bund.de/DE/Home/home_node.html;jsessionid=FE28408EE7BF4BB5241DC6D759C3DA8A.live21304
低排出トラック向け助成

 

ドイツ連邦自動車庁(KBA;Kraftfahrt-Bundesamt)
https://www.kba.de/DE/Statistik/Fahrzeuge/fahrzeuge_node.html
代替燃料自動車の新規登録台数等

ドイツ連邦環境庁(UBA:Umweltbundesamt)
英語:https://www.umweltbundesamt.de/en
ドイツ語:https://www.umweltbundesamt.de/
交通部門におけるエネルギー消費量等

ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW:Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)
https://www.bdew.de/
充電施設の設置台数

ドイツ連邦経済・輸出管理庁(Bafa:Bundesamt fuer Wirtschaft und Ausfuhrkontrolle)
http://www.bafa.de/DE/Home/home_node.html
環境ボーナス(Umweltbonus)申請数

ドイツ自動車工業会(VDA)
英語:https://www.vda.de/en
ドイツ語:https://www.vda.de/de.html
自動車メーカー別CO2排出削減値等