自動車の標準・規格

工業製品には安全な使用や健全な市場取引のための様々な標準・規格が設けられています。各国独自の標準・規格であったり、国際的に調和化が図られて策定される国際標準・国際規格であったりと、その形式は様々です。

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多くの部品からなり、様々なインフラと関わる自動車は関連する標準・規格も多岐にわたります。

例えば、日本の場合、JIS(日本工業規格)が、「JIS規格」との通称で良く知られています。日本の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法に基づいて制定される国家規格で、官報にて公布、改正、廃止が通知されます。

JIS規格は、日本工業標準調査会(JISC)のウェブサイトからも検索可能です。

JIS規格の検索

JISCは経済産業省に設置されている審議会で、工業標準化法に基づいて工業標準化に関する調査審議を行っています。また、国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)に対する日本唯一の会員として、ISOについては、公益財団法人自動車技術会を通じて、自動車専門委員会(TC22)の国内審議団体として、国際規格開発に参加しています。

JIS規格を「自動車」のキーワードで検索すると、「261件」の規格の該当が確認されています(2018年12月時点)。

自動車や自動車部品を海外各国へ輸出する場合、輸出先の国の標準・規格が日本のものと大きく異なる場合、且つ、その標準・規格の要件を遵守しなければならない場合、日本の自動車メーカーはコンプライアンスのために大きなリソースを割かなければならず、また、その対応の遅れは市場での競争優位性の低下に繋がりかねません。

したがって、重要な点として次のものが挙げられます。

① 海外各国の標準・規格、および関連規制の動向をウォッチし、把握すること。
② 関連がある標準・規格を確認した際には、可能な限り早期に対応の検討を開始すること。
③ 自社および日本の産業界、ひいては日本にとって不当な損害を生じさせないよう規格策定プロセスへのロビー活動

「海外エコカー政策モニタリング」でも注目度の高い標準・規格情報については取り上げ、また、この特集ページやコラムなどで関連情報として不定期に情報を公開して参ります。上記①の対応の一助になれば幸いです。

※※※JASO規格※※※

日本には、公益社団法人自動車技術会(JSAE)が発行している日本自動車技術会規格(JASO)と呼ばれるものがあります。世界に先行して二輪自動車用4サイクルエンジン油の規格を定めるなどの実績がある。上記のJIS規格と一部異なる内容のものもあります。JISで制定されていない部分をJASOが主に規格化し、ISOなどとの規格の整合化も図っていると言われています。潤滑油の場合にはディーゼル・エンジン油の規格化を、作動油の場合にはATFやCVTFの規格化を行っています。

自動車技術会


国際標準化活動

自動車に関連する国際標準や国際規格には様々な種類のものがあります。上述の日本産業標準調査会(JISC)が参加している国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、国際連合の一組織である国連・欧州経済委員会(UNECE)、国際高速鉄道協会(IHRA)、米国の非営利団体SAE International、欧州の自動車安全向上委員会(EEVC)などが挙げられます。

代表的なものとしてISOとUNECEについて概要を紹介します。

■国際標準化機構(International Organization for Standardization, ISO)

日本でも広く知られているISOとは、スイスのジュネーブに本拠を置く非政府組織で、主に国際的に通用する規格を制定することを活動内容としています。ISOが制定した規格はISO規格と呼ばれ、国際的な取引を円滑にするために、国際的な基準を設けようとするものです。

製品の仕様など「モノ」に対する規格もあれば、手続きや管理の仕組みなどを対象とする規格も制定されています。

例:
【環境分野】
ISO 14001:環境マネジメントシステム

【自動車分野】
ISO/TR 8713:電気駆動道路走行車-ボキャブラリー
ISO/TR 11954:燃料電池道路走行車-最大速度測定

-ISOと自動車-

ISOは様々な分野の規格を検討・制定しており、それぞれ委員会、さらにはその下部の分科会に分かれて検討が進められています。

自動車分野については主に「TC22」と呼ばれる自動車専門委員会(Technical Committee)およびその分科会(SC)で検討がなされており、2019年7月時点で11の分科会が確認されています。

分科会

分科会名

公表規格

検討規格

SC31

データ・コミュニケーション

124

65

SC32

電器電子部品および一般システム面

152

39

SC33

自動車ダイナミクスおよびシャシ部品

103

25

SC34

駆動、パワートレイン、powertrain fluid

107

24

SC35

照明およびビジビリティ

32

4

SC36

安全および衝突試験

87

20

SC37

電気駆動自動車

21

16

SC38

バイクおよびモペッド

72

11

SC39

エルゴノミクス

31

10

SC40

照明および商用重量車、バス、トレーラーに関する特定の側面

64

7

SC41

気体燃料に関する特定の側面

86

49

(2019年7月更新)

■国連欧州経済委員会( The U.N. Economic Commission for Europe, UNECE)

UNECEは、1947年に設立された組織で、国際連合の下記5つの地域委員会のうちの一つとなります。

●国連欧州経済委員会(UNECE)
●アフリカ経済委員会(ECA)
●アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
●南米カリブ経済委員会(ECLAC)
●西アジア経済社会委員会(ESCWA)

UNECEの主な目的は、欧州圏の経済的統合を促進することにあります。UNECEには欧州、北米、アジアから56ヵ国が参加しています。このほか、関心のある国連加盟国も参加することができ、70を超える専門の国際団体組織、その他非政府組織等がUNECEの活動に参加しています。

UNECEでは様々な委員会やプログラムが設けられており、自動車の規格については、WP.29とよばれる場で検討がされています。

国連欧州経済委員会(UNECE)の「自動車基準調和世界フォーラム(通称WP.29)」は、UNECEの内陸輸送委員会(Inland Trandport Committee)の制度フレームワークの範疇における独特な世界規制フォーラムです。

3つの国連協定が、自動車や自動車部品等に関する規制手段を策定するためのWP.29セッションに、締約国が参加するための法的基盤を提供しています。

1. 「国連の車両等の型式認定相互承認協定」(1958年)に附属の国連規則(UN Regulations)
参考:1958年協定
https://www.unece.org/trans/main/wp29/wp29regs.html
2. 「国連の車両等の世界技術規則協定」(1998年)に添えられた国連世界技術規則(UN GTRs)
参考:1998年協定
https://www.unece.org/trans/main/wp29/wp29wgs/wp29gen/wp29glob.html
3. 「車両の定期的な技術上の検査に係る統一的な条件の採択及びこれらの検査の相互承認に関する協定」(1997年)に附属の国連規定(UN Rules)
参考:1997年協定
https://www.unece.org/trans/main/wp29/wp29wgs/wp29gen/wp291997.html

【目的】
■WP.29で策定される規制枠組みは革新的な自動車技術の開発促進と、他方で世界の自動車安全の継続的な確保に寄与するものとされています。
■また、この世界規模の規制枠組みは環境汚染やエネルギー消費の低減、盗難防止機能の改善などにも寄与するものとなります。
■各国で同じ規制枠組みは、越境取引を成長し、促進させるもので、締約国同士の自動車の認証の相互承認などを検討しています。
■2010年3月には、国際自動車型式認証(IWVTA)プロジェクトが開始されています。

【会議】
■WP.29のセッションは年3回(通常3月、6月、11月)
■作業分科会それぞれは年2回のセッション

【メンバー】
欧州各国、1地域(EU)に加え、日本、米国、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国、韓国等(日本は 1977 年から継続的に参加)、また、非政府機関(OICA(国際自動車工業会)、IMMA(国際二輪自動車工業会)、ISO(国際規格協会)、CLEPA(欧州自動車部品工業会、SAE(自動車技術会)等)も参加しています。

【参考情報】
UNECE-Vehicle Regulations
http://www.unece.org/trans/main/welcwp29.html

 

国際標準化活動における日本の取り組み

日本政府は、主に国土交通省を中心に、自動車および自動車部品の日本の規格を国際調和規格とするための取り組みを進めると同時に、国際標準化活動について積極的に参加しています。

一般財団法人日本自動車研究所では、国際標準化・基準化に関する委員会活動の一覧表を整理し、一般に公開しています。国際標準化機構(ISO)や、国際電気標準会議(IEC)、国連欧州経済委員会(UNECE)など、国際的な標準化機構の各委員会に働きかけを行っています。

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