ドイツにおけるディーゼル車等の走行禁止措置

ドイツでは、2015年末から環境・消費者保護団体DUH(Deutsche Umwelthilfe e.V.)が都市の大気質改善を目的として、州や自治体に旧式ディーゼル車等の乗り入れ禁止を求めるための組織的な訴訟を展開している。訴訟の対象都市の数は、2018年12月17日現在、34に達している。

 

特に、連邦行政裁判所(国内行政裁判権の最上級裁判所)が2018年2月にシュトゥットガルトとデュッセルドルフの二つの都市を対象とした訴訟で、「一部のディーゼル自動車を対象とした走行禁止は法的に排除されるものではない」と判決して以来、全国的に乗り入れ禁止の判決が相次いでいる。

 

ハンブルグでは、すでに二つの道路を対象とした乗り入れ禁止措置が適用されており、また多くの都市では2019年内の適用開始が迫っている。その概要を下記の表(2018年11月時点)にまとめる。なお、これらの中にはまだ裁判が確定していないものも含まれている。

 

一方、ドイツ連邦内閣は2018年11月15日、ディーゼル車走行禁止の拡大を阻止するために、以下の内容を含む、連邦イミッシオン防止法(BImSchG)の第13次改正法案を閣議決定した。

  • 窒素酸化物(NOx)の年平均濃度が50μg/m3(注:EU基準値は40μg/m3)を超えない都市では、走行禁止措置は比例原則に反するため実施しない。
  • 走行禁止措置が実施される場合でも、Euro 6適合車ならびにNOx排出量が270mg/km以下の自動車は、その対象から除外する。

 

都市名
(アルファベット順)
適用開始 対象自動車
ディーゼル車 ガソリン車
ベルリン
Berlin
遅くとも
2019年6月
Euro 1~5
ボン
Bonn
2019年4月 Euro 1~4 Euro 1及びEuro 2
エッセン
Essen
2019年7月1日 Euro 1~4
(2019年9月以降はEuro 5も)
Euro 1及びEuro 2
フランクフルト
Frankfurt
2019年2月
(見込み)
Euro 1~4
(2019年9月以降はEuro 5も)
Euro 1及びEuro 2
ゲルゼンキルヒェン
Gelsenkirchen
2019年7月1日 Euro 1~5
ハンブルグ
Hamburg
2018年6月1日 Euro 1/I ~ Euro 5/V
ケルン
Köln
2019年4月 Euro 1~4
(2019年9月以降はEuro 5も)
Euro 1及びEuro 2
マインツ
Mainz
2019年9月1日
(2019年上半期の窒素酸化物濃度基準が守られなかった場合)
Euro 4 ならびにそれより古い自動車。一部の道路ではEuro 5も。
シュトゥットガルト
Stuttgart
住民以外:
2019年1月
住民:
2019年4月
Euro 4/IVならびにそれより古い乗用車とトラック

 

都市名
(アルファベット順)
乗り入れ禁止
対象ゾーン
罰則 適用除外 備考
ベルリン
Berlin
市街地の8つの道路における
11区間
(未発表) (未発表) ベルリン州当局には、120の道路区間(全長15km)を対象とした乗り入れ禁止拡大の検討が義務付けられている。
ボン
Bonn
通行量が多く、汚染度の高い2つの道路 (未発表) (未発表)
エッセン
Essen
現行の緑色環境ゾーン内。アウトバーンA40を含む。 (未発表) 営業用自動車
フランクフルト
Frankfurt
予定では、現行の環境ゾーン内 (未発表) (未発表)
ゲルゼンキルヒェン
Gelsenkirchen
Kurt-Schumacher通りのみ (未発表) 営業用自動車
ハンブルグ
Hamburg
Max-Brauer-Allee通り:乗用車、トラック、その他の3輪以上の自動車
Stresemann通り:牽引車を含めて車両総重量3.5トン以上の自動車(乗用車とバスを除く)
戒告金/罰金:
乗用車25ユーロ
トラック75ユーロ
住民、緊急車両、営業車
ケルン
Köln
環境ゾーン全域 (未発表) (未発表)
マインツ
Mainz
(未発表) (未発表) (未発表)
シュトゥットガルト
Stuttgart
市全域

(現行の環境ゾーン内)

罰金80ユーロ (未発表) 2019年中期に規制の厳格化が検討されることになっている。

今後の展開とスケジュール

BImSchG第13次改正法案は現在、連邦議会及び欧州委員会に提出されている。ただし、EUの基準値よりも緩いドイツ独自の基準値設定に対しては、連邦参議院をはじめ国内の各方面から異論を唱える声が上がっており、成立の目途は立っていない。

【Source:ドイツ自動車連盟(ADAC)等】

 

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