2023年6月25日(No. 2023w24-06)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU)
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T&E、欧州トラックメーカーのゼロエミッション化準備度をランク付け

Transport & Environment(T&E)は2023年6月、「Ready or Not:トラックのクリーン化における世界的な覇権争いにおけるフロントランナーは誰か?」と題するレポートを発表した。この中でT&Eは、ゼロエミッショントラック(ZET)販売への完全移行に向けた、欧州のトラックメーカー(以下、単に「メーカー」という)の準備度をランク付けした。結果は下表のとおりである。

順位 メーカー名 スコア
1 Scania(VWグループの子会社であるTraton傘下) 86.8
2 Mercedes-Benz Trucks 84.5
3 MAN(VWグループの子会社であるTraton傘下) 75.1
4 Volvo Trucks EU 62.4
5 Renault Trucks 53.3
6 IVECO 44.1
7 DAF 24.4

(出所:T&EのレポートをもとにEnviX作成)

なお、準備度の測定には、以下の6つの指標が用いられた。

  • 指標1:ゼロエミッションの野心(メーカーのZET販売目標等)【40ポイント】
  • 指標2:非ゼロエミッション技術(バイオ燃料、e-fuel等)の追求に対するペナルティ【-13ポイント】
  • 指標3:ZETモデルラインナップ【22ポイント】
  • 指標4:ゼロエミッションモビリティ・バリューチェーンの確保【20ポイント】
  • 指標5:エネルギー(充電や水素充填)戦略【20ポイント】
  • 指標6:資金調達戦略【6ポイント】

その他の主な所見(太字はEnviX)

  • 欧州メーカーと米国や中国のメーカーとの比較においては、テスラとBYDがほとんどの欧州メーカーを凌駕している。TeslaとBYDはいずれも乗用車部門でゼロエミッション車の急速な製造拡大を経験しており、原材料の調達可能性を含め、堅固な電池サプライチェーンを構築している
  • 米国と中国の古参メーカーとの比較において、欧州メーカーは一見、ZET準備度が高いように見えるが、これには、EUの重量車CO2排出規制の予見される厳格化に合わせて、欧州勢がZET販売目標を自主的に発表していることが一つの要因となっている。しかし、これらのコミットメントには拘束力はなく、また一部のメーカーでは、その内容と実際の事業計画の間の乖離も確認されている。
  • 米国カリフォルニア州では最近、2035年までに貨物輸送用トラックをZEV化することを義務付けるAdvanced Clean Fleets規則が承認された。これにより米国の大手メーカーによるトラックの脱炭素化に拍車がかかることが予想される。また、EUの完成車メーカーの大半はグローバルに事業展開しているため、グループレベルの投資の焦点をEUから再び米国にシフトする可能性がある
  • 電池の原材料の長期供給を確保しているのは、乗用車部門との関連性を持つTesla、BYD、Scania、MANの4社のみ。乗用車部門との関連性が薄いメーカーは、独自の電池バリューチェーンを構築する必要があるが、原材料の確保が手遅れとなるリスクがある。このため、欧州メーカーにおいては、包括的な電池エコシステムに属しない限り、その主導的地位が今後数年で脅かされるおそれがある。電池産業の投資を欧州に呼び込むためのシグナルとなる、重量車向けの野心的なCO2排出基準が必要である。
  • 世界電池市場をリードしている中国で、現地メーカーが電池調達に苦労する可能性は低い。また、米国ではインフレ抑制法(IRA)によって電池生産投資が進むだろう。一方、欧州では、計画を保障するための強力な産業政策や資金調達が行われない限り、計画されている電池製造能力の3分の2が既に潜在的なリスクにさらされている。欧州メーカーからの強力なシグナルと長期供給契約がなければ、欧州と米国の両方に子会社を持つメーカーは、現在、eトラック規制がより厳格な、米国内での電池サプライチェーン構築を優先する可能性がある

欧州が競争に勝つためのT&Eの推奨事項

以上のような評価・分析をもとに、T&Eは、欧州が競争に勝つための推奨事項として、次の4点を挙げている。

(1)2030年のCO2排出削減目標を「65%削減」に設定する。

(2)2035年のCO2排出削減目標を「100%削減」に設定する。

(3)規制対象をすべての新型トラックに拡大する。

(4)燃料(バイオ燃料およびe-fuelsなど)をCO2排出基準から除外する。

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