2019年3月26日(No. 201903026)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU)
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EUの自動車一般安全及び交通弱者保護に関する規則案、欧州議会が修正案を可決

欧州議会は2019年3月13日の本会議で、自動車の一般安全と交通弱者の保護に関する欧州委員会規則案(COM(2018) 286、関連文書(1) )について、これに修正を加え、欧州議会の立場を示す「立法決議(legislative resolution)」(関連文書(2))を可決した。

 

背景

規則案は、2018年5月17日に≪第三次Europe on the Move≫法案パッケージの枠組みで、欧州委員会によって発表された。同規則案は、乗用車、小型商用車、トラック、バスを対象に、数々の先進自動車安全機能を標準装備することを自動車型式認証要件とする内容で、以下の3つの型式認証関連の現行規則に置き換わるものである。

  • 歩行者保護に関わる自動車型式認証についての規則(EC)No 78/2009
  • 水素自動車の型式認証に関する規則(EC)No 79/2009
  • 自動車等の一般安全に関する型式認証要求事項に関する(EC)No 661/2009

 

この規則案は、道路交通事故における死者や重傷者の数を2020年~2030年の間に半減するEUの取り組みの一環であると同時に、技術の発展や社会の変化(高齢化、電子デバイス使用等の不注意運転を引き起こす新たな要因の出現、また自転車や歩行者数の増加等)に合わせて、現行法規を改正することも狙いとしている。さらに、一連の安全装備を通してドライバーに自動運転テクノロジーに徐々に慣れてもらうことによって、ドライバーレス・カー(driverless cars)の受容を高める効果も期待されている。

 

義務化される予定の先進安全装備

3月13日の欧州議会ニュースによると、同規則案が成立した場合、EU市場で販売される全ての新車を対象として以下に示す一連の先進安全装備が義務付けられるようになる。

  • インテリジェント・スピード・アシスタンス(Intelligent speed assistance):制限速度を超えて走行すると、アクセルペダルに触感フィードバック(ハプティクス)を与えてドライバーに警告する。
  • ドライバーの眠気検知・警告システム(Driver drowsiness and attention warning)
  • ドライバーの注意散逸警告システム(Distraction warning):交通状況に対する視覚的注意レベルが低下した際にドライバーに警告する。
  • エマージェンシー・ストップ・シグナル(ESS:Emergency Stop Signal):急ブレーキを踏んだ場合にストップランプを点滅させ、後続車に注意を促す。
  • 後方確認システム(Reversing detection system):カメラあるいはモニターの助けを借りて車両後方における対人・対物衝突を防止する。
  • タイヤ空気圧モニタリングシステム(Tyre pressure monitoring system)
  • アルコール・インターロック(Alcohol interlock)取付装置:発車前に車内の呼気分析計への呼気吹きかけることをドライバーに義務付けることにより、飲酒運転を防止する。詳細は、以下の欧州委員会サイト(英語)を参照。

https://ec.europa.eu/transport/road_safety/specialist/knowledge/esave/esafety_measures_known_safety_effects/alcolocks_en

  • 事故データレコーダー(Accident data recorder):交通事故の発生前/中/後の関連データを登録する。詳細は、以下の欧州委員会サイト(英語)を参照。

https://ec.europa.eu/transport/road_safety/specialist/knowledge/esave/esafety_measures_known_safety_effects/black_boxes_in_vehicle_data_recorders_en

 

また、トラックでは既に義務化されている「緊急ブレーキシステム(emergency-braking systems)」と「車線逸脱防止支援システム(lane-departure warning systems)」の装備を、乗用車と小型商用車にも義務付ける。さらにトラックとバスは、「直接視界性(direct vision features)」(ドライバーが、ミラーやモニターを使用せずに、運転席から交通弱者を視覚認識できること)を備えると共に、車両近くの自転車や歩行者の存在を検知する警告システムも装備していなければならない。

 

今後の展開とスケジュール

本規則案が発効するためには、これからEU理事会との交渉で合意に達しなければならない。最新の審議状況は、以下の欧州議会サイトで確認できる。

https://oeil.secure.europarl.europa.eu/oeil/popups/ficheprocedure.do?reference=2018/0145(COD)&l=en

 

なお、車両カテゴリー別の各安全装備の施行日(案)が欧州委員会規則案(関連文書(1) )の附属書IIに示されているが、欧州議会の修正案(関連文書(2) )では適用を迅速化すべく同付属書の内容にも変更が加えられている。

 

関連文書

  • 2018年5月17日欧州委員会発表「一般安全ならびに自動車乗員と交通弱者の保護に関連して、自動車等の型式認証要求事項を定める規則案(COM(2018) 286)」

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:52018PC0286

  • 2019年3月13日欧州議会修正案

http://www.europarl.europa.eu/doceo/document/A-8-2019-0151_EN.html?redirect#top

  • 2019年3月13日付 欧州議会ニュース:Safer roads: new EU measures to reduce car accidents

http://www.europarl.europa.eu/news/en/headlines/society/20190307STO30715/safer-roads-new-eu-measures-to-reduce-car-accidents

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