2019年7月25日付けEU官報に、「新しい重量自動車のCO2排出性能基準を定め、欧州議会ならびに理事会規則(EC)No 595/2009と規則(EU)2018/956、ならびに理事会指令96/53/EC指令を改正する2019年6月20日の欧州議会ならびに理事会規則(EU)2019/1242」が公示された。本規則は、EU初の重量車からの二酸化炭素(CO2)排出規制であり、2019年8月15日に発効する。
規則原題:Regulation (EU) 2019/1242 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 setting CO2 emission performance standards for new heavy-duty vehicles and amending Regulations (EC) No 595/2009 and (EU) 2018/956 of the European Parliament and of the Council and Council Directive 96/53/EC
■ 本規則の構成
本規則は、以下に示す全21条と2つの附属書から構成されている。
第1条 主題と目的
第2条 適用範囲
第3条 定義
第4条 製造者別平均CO2排出量(Average specific CO2 Emissions of a manufacturer)
第5条 ゼロ・低エミッション重量車
第6条 製造者別CO2排出目標値(Specific CO2Emissions targets of a manufacturer)
第7条 排出賃借(Emission credits and emission debts)
第8条 製造者別CO2排出目標値の順守
第9条 モニタリングデータの検証
第10条 CO2排出基準値のアセスメント
第11条 データならびに製造者パフォーマンスの公表
第12条 リアルワールドのCO2排出量とエネルギー消費量
第13条 使用中(in-service)の重量車からのCO2排出量の検証
第14条 附属書I及びIIの改正
第15条 レビューと報告
第16条 委員会手続き
第17条 委任規定
第18条 規則(EC)No 595/2009(注:Euro VI規則)の改正
第19条 規則(EC)No 2018/956(注:重量車のCO2排出量と燃費のモニタリングならびに報告に関する規則)の改正
第20条 指令96/53/EC(注:車両の重量・寸法に関する指令)の改正
第21条 発効
■ 適用範囲(第2条の抄訳)
本規則は、以下の特性に当てはまる、N2及びN3カテゴリーの新車に適用される。
- 車軸構造(axle configuration)4 x 2 かつ技術的最大許容質量(technically permissible maximum laden mass)が16tを超えるリジッド式トラック(lorries)
- 車軸構造6 x 2のリジット式トラック
- 車軸構造4 x 2 かつ技術的最大許容質量が16tを超えるトラクタ
- 車軸構造6 x 2のトラクタ
■ CO2排出基準と罰則(第1条及び第8条の抄訳)
EUで販売される新しい重量車モデルのCO2排出量を、CO2排出基準値(reference CO2 Emissions、以下に説明あり)と比較して、以下の通り削減するものとする。
(a) 2025年:15%
(b) 2030年:30%(ただし、第15条で説明されている見直しの結果、別の決定が下された場合を除く)
CO2排出基準値は、2019年7月1日から2020年6月30日の基準期間(reference period)を対象とするモニタリングデータ(規則(EU)2018/956に準じて報告される)に基づいて、本規則の附属書Iポイント3に従って算出される。
なお、製造者別CO2排出目標値(specific CO2 emissions targets)は拘束力を持ち、これを達成できなかった場合、製造者は以下の罰金(Excess CO2 emission premium)を支払わなければならない。
(a) 2025年~2029年:排出量超過課徴金 =(超過排出量 × 4250ユーロ/gCO2/tkm)
(b) 2030年以降:排出量超過課徴金 =(超過排出量 × 6800ユーロ/gCO2/tkm)
注)tkm:トンキロ。輸送量の単位。貨物のトン数とその貨物を輸送した距離(km)を掛け合わせたもの。
■ ゼロ・低エミッション重量車
重量車の製造者には、2024年末までは「スーパークレジット(super credits)」(製造者別平均CO2排出量を計算する上で、ゼロ・低排出自動車の販売台数に特定の係数を乗じることを認めるもの)を使うことが認められている。しかし2025年以降は、これに代えてベンチマーク方式が導入される。これは、新車販売台数に占めるゼロ・低エミッション重量車の割合(注:この特定にも計算式が設定されている)が2%以上の製造者を対象に、その製造者別CO2排出目標値を緩和するもので、要するに、販売割当アプローチを使ったインセンティブである。詳細は、本規則第5条を参照のこと。