2023年5月28日(No. 2023-05148)
国・地域:欧州・ロシア, ドイツ
テーマ:, ,

ドイツ環境庁「交通騒音がうつ病や不安障害のリスクを高める」交通速度の制限を勧告

ドイツ連邦環境庁は2023年4月26日、交通騒音がうつ病や不安障害のリスクを高めるとの研究報告書『人の精神疾患に対する騒音の影響』を発行した。この結論を踏まえ環境庁は、都市部の自動車の標準速度を時速30kmに制限するとともに、夜間の鉄道や航空機の騒音対策を徹底する必要があると述べた。絶え間ない騒音が心血管疾患を発症させるおそれのあることは、以前からつとに知られていた。しかし、今回、絶え間ない交通騒音がうつ病のリスクを高める可能性のある点も明らかにされた。道路、鉄道、あるいは航空機の騒音が10デシベル高まるごとに、精神疾患発症リスクが最大で4%(道路)、5%(鉄道)、11%(航空)増加するおそれがある。不安障害のリスクも、最大3%(道路、鉄道)から15%(航空)増加するという。

ドイツ連邦環境庁の勧告
環境騒音が心や健康に及ぼす悪影響から人びとを適切に保護するため、環境庁は、次のように勧告した。

  1. 都市部で時速30kmという自動車の速度規制を導入すること
  2. 夜間の騒音に対する保護を改善すること
    • 鉄道交通に対して「覚醒基準」を導入する。
    • 人口密集地に所在する空港では、午後10時から午前6時まで定期便の運航を停止する。

調査研究の方法
本調査研究は、このテーマに関する学術文献に対する体系的なメタ分析に加え、2件(サブスタディー1、2)の疫学調査も実施した。疫学調査では、健康リスクを評価するため、大規模な集団グループを観察し調査した。サブスタディー1ではラインマイン地域で実施しているドイツ最大の騒音影響調査NORAHのデータの拡張分析を、またサブスタディー2ではライプツィヒ地域で実施している「LIFE Adult Study」のデータの評価を行った。「LIFE Adult Study」は、同じグループに属する人びとを長期間にわたって定期的に検査するコホート研究である。このように本プロジェクトでは、体系的な文献分析と、さまざまな地域の人口サンプルを使用した多面的な方法論的アプローチを組み合わせて、精神疾患(特にうつ病や不安障害)発症への交通騒音の影響を実証した。

道路交通騒音の影響
メタ分析の総合結果から、道路交通騒音の連続音レベル(LDEN)が10dB上昇するたびに、うつ病のリスクが3%ずつ増加することがわかった。定性的に許容可能な研究もメタ分析に含めるなら、道路交通騒音が10dB上昇するたびに、うつ病のリスクが4%ずつ増加することがわかった。

関連URL

関連記事

本記事に関する追加調査をご用命の際は、下記表の記事のNo.とタイトルを添えてお問い合わせください。
エンヴィックス有限会社(平日10~19時受付)
TEL: 03-5928-0180, Mail: contact@envix.co.jp