2023年10月9日(No. 2023-10020)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU)
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EU理事会、Euro 7規則案に対する修正案を採択――原案の野心を弱める

EU理事会(加盟各国の閣僚で構成)は2023年9月24日、欧州委員会が2022年11月に提出した「Euro 7規則案」(以下、「原案」)に対する「全般的方針(GA)」(EU理事会としての実質的な修正案)を採択した。イタリア、フランス、チェコ共和国を含む8つの加盟国が、原案は産業に過度な負担を強いるとして反対したのを受けて、今回のGAは、原案の野心を弱める内容となった。乗用車と小型商用車については、現行のEuro 6で設定されている通りの排出ガス規制値と試験条件を維持する。一方、バスや大型トラックについては、Euro 6/VIよりも排出ガス規制値を厳格化し、試験条件を若干調整する。また、原案の規則適用開始日(乗用車と小型商用車:2025年7月1日、トラックとバス:2027年7月1日)は「非現実的」であるとも指摘している。今後は、欧州議会が同様に修正案をまとめたら、EU理事会との妥協案作りの交渉が始まる。欧州議会では、所轄の環境委員会が10月12日に修正案を票決し、これを11月の本会議に諮ることが暫定的に予定されている。

EU理事会のGAのポイント
プレスリリースで挙げられている主な点は以下のとおり。

  • M1およびN1車両(乗用車および小型商用車)に関しては、Euro 6で設定されているとおりの排出ガス規制値と試験条件を維持する。
  • M2およびM3車両(バスおよびコーチ)ならびにN2およびN3車両(大型商用車)に関しては、Euro 6/VIよりも排出ガス規制値を厳格化し、試験条件も若干調整する。
  • ブレーキ粒子排出量やタイヤ摩耗率の規制に関しては、国連欧州経済委員会(UNECE)が採択した国際基準との整合性を高めた。
  • 都市バス向け2030年CO2排出量ゼロ化目標(下記の注を参照)を考慮した。
    EnviX注:2023年2月に欧州委員会が提出した「重量車CO2排出性能基準を定める規則案」には、「都市バスの新車は、2030年時点ですべて(100%)がゼロエミッション車(ZEV)でなければならない」という条項が含まれている(第3b条)。
  • 経済事業者に明瞭性と法的確実性を提供するために、欧州委員会による実施法の採択期限を明確に定めた。

業界の主な反応
原案について「産業界と顧客に不釣り合いに高いコストを強いるもの」と批判していた欧州自動車工業会(ACEA)は、今回のGAを好意的に評価しつつも、「Euro 6/VIと比べてその範囲ははるかに広く、依然として業界に莫大な追加投資を迫るもの」として、Euro 7によるコスト圧力への憂慮を示した。一方、「適切なセーフガードを講じることで、原案の効果的な実施は可能」との立場をとる欧州自動車部品工業会(CLEPA)は、本GAを「Euro 6への回帰」と称し、それが手頃な価格のモビリティの維持、大気質規制の遵守、EU技術革新の促進のいずれにも役に立たないとして批判した。

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