2024年11月4日(No. 2024-11008)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU)
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欧州環境団体らが廃電池リサイクル効率目標の計算対象にLFP電池を確実に含めるよう要求

欧州委員会が2024年9月20日に意見公募を開始した「廃電池のリサイクル効率および原材料リカバリー率の計算および検証の方法論を確立し文書化するためのフォーマットを定める欧州委員会委任規則」の草案をめぐり、運輸分野専門の欧州環境団体T&Eや欧州電池リサイクル協会(EBRA)、欧州最大の環境市民団体ネットワークのEEBなど7団体は2024年10月21日、欧州委員会の担当官に宛てた共同書簡を公開した。現在の草案では、リチウム系電池のリサイクル効率の計算に酸素、炭素、鉄、リン、塩素、硫黄を含めるかどうかの判断をリサイクル事業者に委ねている。共同書簡は、これにより鉄とリンをベースとするリン酸鉄リチウム(LFP)電池(2030年にはEV搭載電池の57%を占める可能性がある)がリサイクル効率の計算から除外され得ることに「深刻な懸念」を表明している。

リン酸鉄リチウム(LFP)電池
EV市場で勢いを増すLFP電池は、2023年には欧州で販売されるEVの15%に搭載されており、2024年には27%、2025年には38%、2030年には57%まで増加すると予測されている。またLFP電池は、太陽光発電パネルに接続される定置用電池の大半を占める。

欧州委員会の委任規則草案と7団体の提言
欧州委員会が電池規則(EU) 2023/1542に基づき9月に公開した当該委任規則草案では、廃電池のリサイクル効率を計算する際に、酸素、炭素、鉄、リン、塩素、硫黄に関しては、計算に含めるかどうかの判断をリサイクル事業者に委ねている。これにより、鉄とリンをベースとするLFP電池をリサイクル効率目標に含めるかどうかはリサイクル事業者に委ねられる。共同書簡は、その結果、電池化学物質間の公平な競争条件を確保できなくなる上、大量の埋立廃棄物を生み出し、電池規制の環境的野心を損なうリスクがあると指摘し(リンと結合している酸素と負極材である炭素も廃棄物となるため)、リンと鉄をリサイクル効率の計算に入れることを義務付けるよう同草案の修正を求めている。

その他業界団体の立場
なお欧州廃棄物管理団体(FEAD)も別途、このような規定の曖昧さを指摘しており、これらの要素をインプットとアウトプットの計算に含めるべきかどうかの基準を委任規則で明確に定義すべきとしている。このほか、非鉄金属業界団体Eurometauxは、リン酸塩に関しては、EU経済にとって重要な材料であり、「重要原材料リスト」に掲載されているとし、リサイクル効率の計算に含めるか否かを任意とするのであれば、電池規則の70条に基づきインセンティブ制度を導入し、リサイクル業者の革新的なソリューションを奨励することも可能との見方を示した。

補足情報
EUの電池規則では、最低リサイクル効率目標(重量平均)として、リチウムベース電池に関して、2025年12月31日までに65%、2030年12月31日までに70%のリサイクル効率を達成するよう求めている。欧州委員会の委任規則草案は、同目標の達成に向けたリサイクル効率の計算・検証方法を規定するものである。

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