EU理事会(競争力会合)で2024年11月28日、「欧州自動車政策の刷新に向けた共同提案:競争力と気候変動への野心の両立」と題する声明が協議された。声明は、オーストリア、ブルガリア、チェコ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スロバキアが提出したもので、特に自動車と小型商用車のCO2排出基準の見直しを一年前倒しして2025年に行うことや、2025年の排出目標を達成できなかった自動車メーカーに対する罰則の影響を軽減すること、自動車産業の経済競争力と気候変動を両立するための長期的な戦略を採用することなどを求めている。なお、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、2期目となる新体制の始動(12月1日)に先立つ11月27日、欧州の自動車産業の未来に関する戦略的対話を開始することを宣言しており、EUでは向こう数カ月間、自動車産業が主要議題の一つとなることが予想されている。
「欧州自動車政策の刷新に向けた共同提案」の概要
- 包括的な産業戦略:経済競争力と気候中立性という2つの目標を達成するために、EUは総合的で長期的な自動車政策を採用する必要がある。このためには、自動車部門、欧州委員会、加盟国間のパートナーシップ・フォーラムを設立すべきである。
- 規制の明確化と技術的中立性の必要性:「不確実性」は新技術への長期投資の妨げとなる。EUの産業戦略に不可欠な要素は、安定した、予測可能な規制環境の整備である。また、我々は「技術的中立性の原則」を採用することを求める。この原則は、バッテリー式電気自動車(BEV)や水素自動車以外にも、持続可能な動力源を用いた内燃機関自動車を含む、より広範なクリーン自動車ソリューションを認めるものである。また、CO2排出目標の達成に貢献するその他のテクノロジーも採り入れられるように、代替的な計算方法を導入することができる。
- 情報に基づく意思決定のためのデータ駆動型アプローチ:欧州委員会は、2025年までにゼロ/低排出の乗用車と小型商用車の普及、雇用への影響、充電・充填インフラの整備状況に関する進捗報告書を公表することになっている。我々は、欧州委員会に対し、この報告書をできるだけ早く提出することを要請する。そうすることにより、意思決定に市場の現実を反映させ、適応に必要な時間を業界に与えることができる。
- CO2排出規制の緊急評価:欧州自動車産業の競争力を維持し、グリーン技術の研究開発向け投資が流出するのを防ぐためには、乗用車と小型商用車のCO2排出規制を緊急に評価しなければならない。このため、進捗報告書と包括的評価をできるだけ早くまとめ、欧州委員会は2025年内にも改正法案を提出すべきである。
- 排出量超過課徴金(Excess Emission Premium):BEVの普及が遅れているため、乗用車向けの2025年CO2排出削減目標を達成できないメーカーに罰金が科されるリスクがある。このような罰則は、技術革新と開発への再投資を行う業界の能力を著しく制限し、国際舞台におけるEUの競争力を損なうことになる。我々は、競争力をこれ以上損なうことなく公正な移行を促進するために、短期的なパッケージを含め、EUレベルでの緊急で適切な措置と十分な財政的手段を講じる必要があると考える。
欧州委員会は戦略的対話を開始
なお、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は2024年11月27日、欧州の自動車産業の未来に関する戦略的対話を開始することを宣言した。さっそく12月上旬にも、同委員会のツィツィコスタス運輸担当委員と主要ステークホルダー間の戦略的対話が開催されることになっている。こうした最新動向を受けて、欧州の自動車アナリストであるMatthias Schmidt氏は、「新・欧州委員会の最初の100日は、自動車メーカーだけでなく欧州の自動車バリューチェーン全体にとって非常に重要な期間になる」とコメントしている。
関連URL
欧州自動車政策の刷新に向けた共同提案(2024年11月26日発行)
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-15960-2024-INIT/en/pdf
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