材料の開発・生産・リサイクル事業を行うユミコア(Umicore、本社:ベルギー・ブリュッセル)は2022年9月21日、ポーランド南西部のニサ(Nysa)でEV電池用の正極活物質(CAM)生産施設を開設したことを正式に発表した。同施設は2019年に着工され、既に2022年7月に生産を開始している。ユミコアのプレスリリースによると、この工場を通じて、同社は完全に循環型で持続可能な電池材料バリューチェーンを有する欧州初の企業となる。また、「このギガファクトリーは、『持続可能で世界的な競争力を備えた独自の電池エコシステムを域内に持つ』というEUの目標達成に向けた重要な一歩である」と謳われている。
同工場の年間生産能力は2023年末に20 GWh、2024年末に40 GWhに達する予定で、さらに2020年代後半には200 GWh(EVにして約300万台分)以上に増加する可能性がある。このロードマップは、同社の「2030年までに全世界で400 GWh以上の生産能力を達成する」という目標と、「三大陸において総合的な電池材料の地域バリューチェーンを構築する」という全社的な戦略の一部を構成するものである。このために、ユミコアはカナダにCAMとその前駆体材料の生産施設を建設し、さらにアジアの既存施設の生産能力を拡大する予定である。
ニサ工場はカーボンニュートラル対応であり、電力はすべて近隣のオンショア風力発電所から供給される再生可能電力で賄う。同工場の従業員数は現在約240名で、2023年末には400名に増員される見込みである。
供給先は、欧州内の自動車メーカーや電池セルメーカー。ちなみに、ユミコアの顧客にはAutomotive Cells Company(ACC)(ステランティス、Total、メルセデス・ベンツのバッテリーセル合弁会社)が含まれている。また、ユミコアは9月26日、独フォルクスワーゲン傘下の電池メーカーPowerCo(本社:ドイツ・ザルツギッター)と電池の正極と前駆体用の材料製造を行うための合弁企業を設立することを発表し、現在このための生産拠点の選定を進めているとしている。