監査法人系コンサルティング会社・デロイトは毎年「グローバル自動車消費者意識調査」を実施しているが、同調査の2023年度版で対象国となっているフランスの消費者に関するアンケート調査結果「2023 Global Automotive Consumer Study -Key Findings: FRANCE」がこのほど公表され、バッテリー式電気自動車(BEV)の購入を検討しているフランスの消費者の割合がわずか8%であることが明らかになった。欧州では2035年から内燃機関車の新車販売が禁止される予定であるが、フランスの消費者にとって電動モビリティへの移行に際して重要なの要素とは、まず何よりも経済性が伴うこと、そして航続距離や充電時間など技術の向上が重要視されている。同調査の概要を以下にまとめる。
わずか8%がBEV購入を検討
次回に購入するクルマの種類に関しては、内燃機関車と回答した人が47%を占め、BEVを検討している人はわずか8%であった。ハイブリッド車(HEV)と回答した人は21%で、トップの内燃機関車に続いた。いずれの割合も前年2022年の数値とほぼ同じで、2022年11月に欧州連合(EU)理事会と欧州議会が内燃機関の新車販売を2035年から禁止することで基本合意した以降でも消費者の指向に大きな変化は見られなかった。
次回に購入するクルマの種類
出所:デロイト調査よりEnvix作成
EVの購入に5万ユーロ以上は費やさない
次回にEVの購入を検討している人のうち、87%は5万ユーロ(約716万円)以上は費やさないと回答した。3万ユーロ(約430万円)以下のEVを希望する人は56%で、うち1万ユーロ(約143万円)以下と回答した人は6%であった。コンパクト型電気自動車(EV)のダチア「スプリング」の車両価格は2万800ユーロ(約298万円、5000ユーロのEV購入ボーナスを含めない価格)と手頃な価格で、実際フランスのEV市場で人気モデルとなっている。
次回に購入するクルマの価格
出所:デロイト調査よりEnvix作成
400km以上の航続距離が必要
400km以上の航続距離が必要と回答した人は79%と大半を占めた。また、600km以上の航続距離が必要と回答した人も37%と比較的多かったが、この背景には充電設備の利便性に対する不安があると推測される。実際、EVの購入を検討している人のうち、65%は自宅での充電を想定している。テスラの「モデル3」は491kmの航続距離(WLTPモード)を有しているが、車両価格は4万4990ユーロ(約644万円)と高額で、他方手軽なダチア「スプリング」は航続距離が230kmに留まっている。
BEVに必要な航続距離
出所:デロイト調査よりEnvix作成
【参考】デロイトのアンケート調査レポートは以下のURLで参照できる。
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/fr/Documents/consumer-business/Deloitte_GACS_2023_France.pdf