ドイツのアウディ(Audi AG)は2023年3月3日、サーキュラーエコノミー戦略の一環で、同社が研究・リサイクル・部品供給分野の15のパートナーと共同で実施中の、「MaterialLoop」プロジェクトの進捗状況を報告した。同プロジェクトは、自動車製造における素材のクローズドループリサイクルを確立するための知見の収集を目的としている。具体的には、使用済み自動車(ELV)から回収したスチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスなどの材料を、新車製造に投入することを目指すものだ。
アウディによると、これまでのところ、新車製造に投入されるリサイクル材はごくわずかである。しかし、同社は、技術的可能性と経済的・生態学的合理性がある限り、ELVから回収した材料を新車製造で再利用していきたいと考えている。同社のマルクス・ドゥスマンCEOによると、それによって、貴重な一次資源(バージン材料)の節約、製品の環境フットプリントの削減、長期的な供給保障の向上といった様々な効用がもたらされる。
MaterialLoopプロジェクトでは、2022年10月、100台の車両の解体を行った。各コンポーネントに的を絞って分解するだけでも、リサイクルに適した高品質の材料(例えば、通常よりも大きなプラスチック片)を確保することができた。なお、分解後に残った車体は細断され、パートナー企業との協力の下で各材料群に分類された。
こうした実証プロジェクトは4月まで実施される予定だが、得られた知見の一部はすでに実践に移されている。例えば最初の試験段階では、リサイクル材を約12%含む6つのスチールコイルが製造された。これらのスチールは、アウディの高い品質要件を満たしており、最も要求が厳しい車両構造部品にも使用可能であるという。アウディは、同スチールを使って、最大1万5000個のAudi A4用インナードアパーツを製造する予定である。
Circulariseがデジタルツールを提供
なお、パートナー企業の一つであるオランダのCircularise社は、デジタル製品パスポート(DPP)向けソフトウェアを専門とするスタートアップである。同社は、MaterialLoopプロジェクトの枠組みで、すべての参加企業に、ブロックチェーンテクノロジーを活用したデジタルツールを提供している。同ツールを使えば、解体からリサイクル、そして再利用に至るまでの工程における、すべての材料の動きを追跡することができる。Circularise創設者であるMesbah Sabur氏は、「当社は、DPPを使うことにより、バリューチェーンの各段階における材料、プロセス、影響のトレーサビリティおよびアカウンティングをサポートすることができます。自動車サプライヤーやOEMにとっては、車両のライフサイクルアセスメント(LCA)やカーボンフットプリントの正確な測定が可能となり、より多くの情報に基づいた、循環型の自動車製造に関する意思決定が容易になります」と述べている。
参照URL
- Audi AG 2022年3月3日発行プレスリリース(英語)
https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/turning-old-into-new-materialloop-project-tests-circular-economy-potential-of-end-of-life-vehicles-15205 - Circularise 2022年3月3日発行プレスリリース(英語)
https://www.circularise.com/press-releases/audi-materialloop-project
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