フロンガスがオゾン層を破壊する危険性を初めて指摘したメキシコのノーベル化学賞受賞の科学者であるマリオ・モリーナ氏がスポンサーとなり、中南米諸国で展開されているマリオ・モリーナ・センターのチリ研究所が、グリーン水素燃料の乗用車や商用車での使用拡大のための技術開発プログラムH2V-TRANSDRIVEを推進している件が、電気モビリティ情報誌Portal Mobilidad誌で紹介された。プログラムには、グリーン水素のバリューチェーン全体をカバーする企業や機関が参加し、水素燃料自動車、特にバッテリーとグリーン水素燃料を組み合わせたハイブリッド自動車を開発して水素燃料の需要を増やすことで、水素燃料生産と供給網設置への投資を正当化することを目的としている。
プログラムには、鉱山や林業、リーテイル、運送業界の大企業や、自動車メーカー、発電会社、公的機関など、水素燃料に関連するすべてのバリューチェーンが参加し、ラテンアメリカで初めての、グリーン水素燃料の中距離バスや貨物車フリートを創設する。技術開発には、2026年までに6万台の商用の電気自動車及び水素燃料自動車の製造を予定している欧州のQEV Technologiesが参画する他、スペインで既に水素燃料自動車向けの20MWの水素ステーションを4ヵ所開発しているKopala International社が参画する。また運輸・通信省や、ドイツ国際協力公社GIZの援助を受ける。
マリオ・モリーナ研究所の技術チームの教授によれば、電気自動車は航続距離に制限があるため、中・長距離走行のバスや貨物自動車にとっては、充電の為のオペレーションの中断でコスト高につながるが、水素燃料はそうした問題がなくニッチな市場が見込める。チリはグリーン水素政策により、グリーン水素の製造と輸出をめざしているが、国内市場でも2030年までに5000台以上のフリート需要が見込まれるという。ただしフリートへの投資には、まず水素ステーション網ありきであり、バリューチェーン全体を開発するビジネスモデルを目指すものとなる。
本記事に関する内容は、以下のURLで閲覧できる(スペイン語表記)。
https://mobilityportal.lat/cmm-programa-h2v-transdrive/