米州開発銀行IDBは2023年10月、2050年に向けたラテンアメリカ(ラ米)における短・中・長期の電気モビリティ施策を提案する報告書「2050年に向けた輸送:ラテンアメリカ及びカリブ諸国における脱炭素と気候変動レジリエンスへの道」を発表した。短期的には、内燃機関の小型乗用者の輸入スキームを修正及び改善すること、中期的には、スマート充電網を拡大し、商用車の買い替えを融資すること、長期的には、電気自動車購入への融資を充実させて、電気モビリティを確実にすることが提案されている。また報告書では、官民による運営や、PPP(官民提携)、民営化に関する規則など、官民の協調体制が必要であると述べられている。
報告書は、以下の章立てとなっている。
- ラ米の気候変動における輸送部門の位置づけ。
- 何も対策を取らなかった場合のリスク。
- ラ米諸国の気候変動対策に関する国際社会へのコミットメント。
- 都市交通・陸上輸送・海上輸送・航空輸送における脱炭素と気候変動緩和・適応策。
- ラ米の輸送部門における脱炭素とレジリエンスに向けたロードマップ。
報告書では官民の協調体制に関し、陸上輸送は基本的に民間のビジネスであるため、電気モビリティに関係する企業の政策策定への参加は、重要かつ急務であるとうたっている。渋滞や古い自動車の走行、電気自動車不足は、輸送部門の省エネに悪影響を与えるものであり、業界のリーダーと政策策定者、その他の主要な関係者の共同作業のためのプラットフォームを使って、資源や知識、経験を共有・統合する戦略が必要であると指摘している。
また電気モビリティ推進のためには明快な政策が必要としたうえで、好例として、米国運輸省の「2022―2026年戦略計画」や、欧州の「Fit for 55」、2045年までに排出ネットゼロを目指すスコットランドの「国家運輸戦略」、スイスの「2050年に向けたモビリティ及び国土計画」などが紹介されている。
米州開発銀行の報告書は、以下のURLで閲覧できる(スペイン語及び英語表記)。
https://publications.iadb.org/es/transporte-2050-el-camino-hacia-la-descarbonizacion-y-la-resiliencia-climatica-en-america-latina-y