2024年12月22日(No. 2024-12145)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU)
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欧州議会で最大勢力の欧州人民党、「2035年からのICE禁止は撤回すべき」

欧州議会最大の政党グループで中道右派の欧州人民党(EPP)は2024年12月11日、『欧州自動車産業の競争力確保』と題するポジションペーパーを採択した。この中でEPPは「150年以上にわたり欧州の繁栄を推進してきた欧州自動車部門が現在、外的・内的課題により、かつてない圧力に直面している」とし、EU包括的戦略の策定を支持するとともに、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が11月末に提案した「自動車部門の将来に関する戦略的対話」の実施を支援する姿勢を示した。その上で、2035年の新車ゼロエミッション化(すなわち、事実上の内燃機関搭載車(ICE)の禁止)を撤回すること、そして2025年から厳格化される乗用車・小型商用車のCO2排出目標に関連して、同目標を達成できなかったメーカーが罰金を回避できるようにするための措置を導入することなどを提案している。

 

EPPのポジションペーパーには、2050年までに気候中立を達成しながら欧州自動車産業がグローバルな競争力を維持できるようにするためのカギとして、一連の提案事項(緊急対策および長期的対策)がまとめられている。この中で特に注目すべき「ICE禁止の見直し」と「罰則の回避」の2点について、それぞれの要点を以下にまとめる。

 

ICE禁止の見直し

  • EUは、この分野の現実を考慮し、「技術的中立性(technological neutrality)」を再びその基本理念としなければならない。技術的中立性を確保しながらEUの脱炭素化目標達成への道筋を進むために、2035年に予定されているICE禁止は撤回(reverse)されるべきである。
  • 欧州委員会は、規則(EU)2019/631の改正を早急に提案し、技術中立のアプローチを採用し、CO2排出削減に資するすべてのテクノロジーの役割を認める必要がある。代替燃料(e-fuel、バイオ燃料、再生可能燃料、合成燃料を含む)の役割を認め、明示的な適用除外を設けると共に、その他の措置(炭素補正係数の導入など)を採り入れて、2035年からのICE禁止を見直すべきである。
  • この改正の一環で、欧州委員会は「カーボンニュートラル燃料(carbon-neutral fuels)」の定義も提案すべきである。
  • プラグインハイブリッド車(PHEV)などの他の技術が果たす役割も認め、EU全域で適切な実現条件(EVの入手可能性と価格、充電・補給インフラなど)を整備すべきである。 

罰則の回避

  • 現在、EV販売台数は予測を下回っており、自動車メーカーは2025年の排出目標を達成できずに数十億ユーロの罰金を科される可能性がある。そして、この危機的状況において、メーカー各社は変革を成し遂げるための収益を必要としている。
  • 欧州委員会は、2025年見直しの一環で、現状および予測される展開を分析し、その上で、自動車メーカーの競争力を維持するためにどのような措置が必要かを決定すべきである。一例を挙げると、遵守状況の評価を3年間の平均値に基づいて行うようするといった方法がある。
  • そうした措置はすべて、企業が今まで行ってきた努力や投資を考慮に入れるものとし、法的争いを回避しなければならない。
    備考:ドイツSpiegel誌によると、EPPのポジションペーパーの草案には「2025年向けのCO2排出規制値の適用を2027年に延期すべきである」と記されていたが、採択されたペーパーではこれは取り下げられた。Spiegel誌は、「(2027年への延期については、)気候保護に熱心な一部のメーカーによって法的措置がとられる可能性があった」と指摘している。
  • 罰金が避けられない場合、徴収された罰金は、一般的なEU予算ではなく、特定の目的(インフラ整備、インセンティブ制度、デジタル化など)に充て、欧州自動車部門に再投資されるようにすべきである。 

関連URL
EPPポジションペーパー『欧州自動車産業の競争力確保』
https://www.eppgroup.eu/newsroom/epp-group-position-paper-securing-the-competitiveness-of-the-european-automotive-industry

 

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