2024年2月4日(No. 2024w05-10)
国・地域:欧州・ロシア, 欧州連合(EU), ドイツ
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EVのエンジン車に対する優位性はドイツでは9万km走行で実現、独VDI調査

ドイツ技術者協会(VDI)が2023年12月11日に発表した乗用車のライフサイクル評価に関するレポートによると、CO2排出量をライフサイクル全体で比較した場合に、ドイツで走行する電気自動車(EV)が内燃機関(ICE)車に対して優位になるためは、少なくとも9万キロ走行する必要があるとの結果が示された。VDIのレポートに関して、フランスのメディアがまとめた要約を以下にまとめる。

VDIは、エンジニアリング、デジタルトランスフォーメーション、気候変動への適応、地球温暖化の抑制などの分野を専門とし、カールスルーエ工科大学(KIT)と共同で実施した長期分析に基づいて今次レポートを作成した。この分析結果は、過去の研究を裏付ける内容となっており、環境性能を評価する「グリーンNCAP」の調査結果とも一致している。

  • コンパクトカーのカテゴリー(例えば、VW「3」、フォード「フォーカス」、トヨタ「カローラ・ハイブリッド」、VW「ゴルフ」)の車両について、様々な燃料オプションが環境に与える影響を調査したところ、このカテゴリーのEVは、9万km走行後(ドイツ国内で走行した場合)にICE車よりも環境上優位になることがわかった。これは小さい数値であり(どの車も廃車までにこの走行距離をはるかに超える距離を走行する)、また大きな数値でもある(フランス人の平均走行距離に基づくと、フットプリント上の「赤字」を一掃するには7.5年の期間を要する)。
  • ドイツ国内の場合は「転換点」が9万kmに算出されたが、充電に使用される電気の発電方法によって大きく上下し、100%再生可能な電力が使用されれば、「転換点」は縮まり6万5000kmとなる。他方、中国やポーランドのように化石燃料が電力源となっている場合は、「転換点」は16万kmと大幅に伸びる。
  • ライフサイクル全体で見ると、EVは他のクルマよりもCO2排出量が少ない。20万キロメートル走行後(ライフサイクル全体)に、EVは合計2トンのCO2を排出する。これに対し、プラグインハイブリッド車(PHEV)は24.8トン。ディーゼル車は33トン、ガソリン車は37トンで、EVと比較してそれぞれ26%、35%、排出量が多くなっている。
  • VDI会長のヨアヒム・ダマスキー博士は、「長期的には、EVとPHEVが環境バランスという面で優位に立つだろう。ドイツにおける再生可能エネルギーの拡大、グリーンバッテリーの開発、そして既存の自動車用燃料の持続可能な生産が急務である」と説明した。

【参考】VDIの調査レポートの概要(ドイツ語)は以下のURLで参照できる。
https://www.vdi.de/news/detail/vdi-oekobilanzstudie-erst-die-gruene-batterie-macht-die-e-mobilitaet-klimafreundlich

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