CAFE(企業別平均燃費)規制は欧州連合(EU)において2015年に可決され、2020年に施行されたが、2025年の新規制基準への移行を前に、欧州の自動車メーカーにとって大きな経済的リスクがある問題をフランス日刊紙ルモンドが報告している。「CAFEによるCO2排出量規制のプレッシャーにさらされる自動車メーカー」と題する2024年7月26日付のWeb記事の概要を以下にまとめる。
2035年以降、自動車メーカーは欧州市場でガソリン車やディーゼル車など内燃機関(ICE)車を販売できなくなる。しかし、ルノー、ステランティス、フォルクスワーゲンは、それ以前の2025年に目を向けている。2025年には新たな「CAFE」規制が導入される予定で、販売される新車は、1キロメートル走行あたりのCO2排出量が平均して81グラム以下でなければならない(現在は95グラム)。2030年には上限が50グラムに引き下げられる。この基準に適合するためには、メーカーはICE車4台につき少なくとも1台の電気自動車(EV)を販売しなければならない。ICE車のCO2排出量は、1キロメートル走行で95グラムをはるかに超え、85グラムを下回るのは、ハイブリッド車の優良モデルに限られる。CAFE基準を超えた場合、メーカーは高額な罰金(1グラムあたり95ユーロ)を支払うか、罰金を避けるためにEV先行の競合他社から炭素クレジットを購入しなければならない。テスラは2009年以来、この方法で80億ユーロ(約1兆2870億円)以上を稼いでいる。
問題は、欧州においてEVの市場シェアが4分の1にも至っていないことだ。ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は、「市場シェアは15%以下にとどまっており、現在の需要の伸びでは、基準に適合するために必要な新車EV販売比率22%や23%を達成することは不可能だ」と語る。ステランティスでは、傘下ブランドであるアルファロメオのジャン=フィリップ・インパラートCEOが「2025年には、新車EV販売比率を20%にしなければ、莫大な罰金を支払わなければならなくなる」と発言している。
CAFE規制はEUだけでなく、米国でも早期から導入されており、ステランティスは2023年に米国において数億ドルの罰金を科せられた。自動車メーカーは罰金を払いたくはないし、テスラや中国EVメーカーを潤したくもない。ルノーのデメオCEOにとっては、「EVの販売が再び軌道に乗らない場合、目標を達成する唯一の方法は、ICE車の生産を減らすことだ。EVをあと50万台販売するか、ICE車を250万台生産するかで、いずれにせよ工場にとっては災難である」と語った。
では、基準を変える必要があるのだろうか?タバレスCEOは、求めているのはただひとつ、安定性だと断言する。欧州自動車工業会(ACEA)の会長も務めるルノーのデ・メオCEOは、欧州連合(EU)の戦略を実情に合わせる必要があると考えており、「EVをあきらめてはならないが、平均購買力はすべての国においてEVシフトを可能にしているのか?バッテリーのギガファクトリーは準備できているのか?、など現状を把握する必要がある」と説明する。新型車への投資によってそれなりの役割を果たしているメーカーが、罰金によってそのツケを払わされるだけであってはならない、というのがデ・メオCEOの考えだ。
【参考】ルモンド紙(2024年5月12日付)のWeb記事は以下のURLで参照可能。
https://www.lemonde.fr/economie/article/2024/07/26/les-constructeurs-automobiles-sous-la-pression-des-normes-cafe-d-emissions-de-co2_6258788_3234.html