2022年5月29日(No. 2022w21-14)
国・地域:欧州・ロシア, スペイン
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VW/セアト、スペインにおけるEVエコシステム構築プロジェクト投資規模を100億ユーロに拡大

フォルクスワーゲングループ(以下、「VW」)と同グループ傘下のセアト(SEAT S.A.、本社:スペイン・バルセロナ)は、スペインにおける電動モビリティ・エコシステム構築プロジェクト「Future: Fast Forward」への投資総額を、当初(2022年3月発表時点)の70億ユーロから100億ユーロ(約1兆3575億円)に増加する意向を明らかにした。これは、5月5日にバレンシア州・サグント(Sagunt)(VW/セアトの電池ギガファクトリー建設予定地)で開催されたイベントの場で、VWのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)が発表したものである。なお、同イベントには、スペインのペドロ・サンチェス首相も出席した。さらに、VWと電力大手イルベドーラ(Iberdrola)は、このイベントの枠組みで、建設予定の電池ギガファクトリーの近くに約250ヘクタールの大規模ソーラーパークを建設し、同工場に電力供給を行う計画に署名した。

 

「Future: Fast Forwardの4つの柱

VW/セアトが主導する「Future: Fast Forward」プロジェクトは、スペインを欧州のEVハブ拠点にすることを目指し、以下の4つの柱で構成されている。

  • マルトレル(Martorell)工場とパンプローナ(Pamplona)工場のEV化
  • EV用電池のエコシステム構築(電池ギガファクトリーの建設を含む)
  • EV主要コンポーネントのスペインでの現地調達化
  • 人材育成、デジタル化、循環型経済関連の取り組み

 

電池ギガファクトリー

上記の4つの柱のうち、もっとも注目を集めているのが、電池ギガファクトリーの建設計画である。これが実現すると、VWグループが欧州で展開する6つのギガファクトリーのうち3つ目のものとなる。同計画では、サグントにおける約200ヘクタールの敷地に、年間生産能力40ギガワット時(GWh)の工場を建設し、マルトレル/パンプローナ両工場でのEV生産に電池を供給する。VWは、2023年第1四半期に着工、2026年に量産開始、2030年までに3000人以上を雇用するとしている。このギガファクトリーを通してVWが描く青写真は、自社工場だけで完結するものではない。再生可能エネルギーの利用、地域に根差したアプローチ、重要な原材料の直接回収といった取り組みを通して「持続可能性」や「クローズド・バリュー・ループ」の実現を図り、包括的なエコシステムを構築しようというものである。なお、同ギガファクトリーの建設費用は30億ユーロ超と見られており、VW/セアトは、建設にはPERTE-VEC(次項で詳述)による資金調達が不可欠であるとしている。

 

PERTE-VECとは

PERTE-VECは、スペイン政府が実施する、電気自動車とコネクテッドカー分野の経済復興と変革に向けた戦略的プログラムであり、欧州連合(EU)の「次世代EU」復興基金」からの29億7500万ユーロを財源として、選考されたプロジェクトにこれを融資または助成金として交付するものである。具体的な選考日程は定かではないが、年内には交付が開始される見通しとなっている。VW/セアトが率いるコンソーシアム(11地域からの全62社で構成されており、その61%は中小企業)は、5月4日にPERTE-VECへの正式な申請を行った。今回、VW/セアトが投資総額を30億ユーロ増やした背景には、交付獲得への意欲をあらためて強調する狙いもあると見られている。

 

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