2023年9月3日(No. 2023w34-04)
国・地域:欧州・ロシア, 北欧
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自動車運搬船の火災事故でEVの船舶積載が問題に、ノルウェーでは積載拒否も

2023年7月末にオランダ沖で発生したパナマ籍船の自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」の火災事故をめぐり、電気自動車(EV)の船舶積載の安全性の問題が論議を呼んでいる。

相次ぐ船舶火災事故
「フリーマントル・ハイウェイ」は日本の正栄汽船が船主で、高級車など3783台を積んでいたが、うち498台のEVが含まれていた。事故発生当初、船員の発言からEVが発火元であると考えられていた。「フリーマントル・ハイウェイ」事故が発生する前の2022年2月にも、商船三井が運航していたパナマ籍船の自動車運搬船「フェリシティ・エース」で火災が発生し、大西洋で沈没した事故が起きており、積載された3965台の中には同じくリチウムイオン電池を搭載したEVやハイブリッド車(HEV)が含まれていた。保険会社アリアンツ・グローバル・コーポレート&スペシャリティ(AGCS)の報告によると、2022年に発生した船舶火災件数は過去10年間で最大の409件、前年よりも13%増加し、そのうち13件が自動車運搬船で発生した。

消火が難しいEV火災
リチウムイオン電池は何もしなくても突然、発火することがあり、また、一旦発火するとその炎の勢いが凄まじく、消火・鎮火が非常に難しく、しかも、非常に高温になる。消火しても、電池内に残ったエネルギーにより再び発熱し、再燃に至ることもある。内燃機関車の火災であれば、消火活動は一般的には船舶内の防火設備と乗組員による作業で対応できるが、リチウムイオン電池を搭載した車両の火災の場合には、外部からの救助活動が必要となり、乗組員や船舶自体を危険にさらす可能性があるという。

「フリーマントル・ハイウェイ」事故、火元はEV以外に
船舶は12層構造であるが、事故後の専門家による検証の結果、下部の4層には被害はなく、498台のEVを含む約1000台の車両も損傷なしの状態にあることが判明した。このため、火災の原因をEVに特定することはできないとの報告がなされた。火災の原因はまだ特定されていない。

EV大国ノルウェーではEVの積載拒否も
ノルウェーの運送会社ホーグオートライナーズは、「フェリシティ・エース」事故の後に声明を発表し、「私たちは乗組員と貨物の安全を確保することを約束しているため、中古のEVは運送しないことに決めた」との決定を明らかにした。また、同国の船舶会社ハビラ・クリストルテンも、外部調査結果を受けて、従来のフェリーにEV、HEV、および燃料電池車を積載することを禁止する措置を講じている。

地中海のフェリーでもEV規制
地中海のコルシカ島を拠点を置く海運会社コルシカ・リネアは、EVユーザーに対して車両積載電池の残量を30%未満にすることを乗船の条件に定めた。同社によると、内燃機関車と比較してEVの発火リスクは低いが、電池の残量を低くすることで自動点火のリスクを軽減できるという。簡単に言えば、充電されたエネルギーが少なければ少ないほど、電池が受けるストレスは減り、オーバーヒートする可能性は低くなる。50%を下回ると、セルの化学的性質はすでに安定していると考えられ、残量が小さくなるにつれて安定性は高まる。

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