米国のビジネス雑誌ワイアードは2024年8月16日のウェブ記事において、米国と英国における電気自動車(EV)の減価償却についての調査結果を発表し、その中でEVの1年間の減価償却率が最大50%に至っていることを明らかした。同記事の概要を以下にまとめる。ワイアード誌はテックカルチャー・メディアとして米サンフランシスコで1993年に創刊され、日本版も発行されている。
EV価格調査のツール
米自動車情報会社Edmundsのオンライン査定システムと英自動車価格情報会社キャップHPIの自動車業界向け車両査定サービスを使用。
英国における状況
ブランド・モデル | 新車購入価格 | 12カ月後の推定下取価格 | 原価償却率 |
アウディ「e-トロンG」 | £107,675 | £54,700 | 49% |
フォード「マスタング・マッハE」 | £59,325 | £28,575 | 52% |
ボルボ「ポールスター2」 | £52,895 | £25 390 | 52% |
ポルシェ「タイカン」 | £100,200 | £50,700 | 49% |
テスラ「モデル3」 | £50,000 | £27,550 | 45% |
ヒョンデ「アイロニック5」 | - | - | 50% |
- 6種類のEVが12カ月及び1万マイル走行後に、すべて価値が半減すると推定されてい ることが明らかになった。
- 英国の年間平均走行距離は7000マイルであるが、EVに関しては、走行距離は減価償却にあまり影響を与えない。例として、「ポールスター2」が12カ月間に走行した距離が1万マイルではなく2万マイルだった場合、追加の下取り価格は975ポンド、つまり元値の2%しか下がらない。
- EVとガソリン車と比較については、アウディ「Q7 55」と「e-tron 55 SUV」を、どちらも1年落ちで走行距離1万マイルで比較すると、新車時の価格が安いにもかかわらず、12ヶ月後にはガソリン車の方が42%価値が高くなった。こうした現象は価格帯の低い車にも当てはまり、3年間、3万マイル走行した場合、フォルクスワーゲン「ゴルフ」は、ガソリン車モデルはEVモデルに対して46%の価格プレミアムがつく。
米国における状況
・米国においては、EVの初期減価償却は英国ほど過酷でないが、それでも12カ月と1万マイル走行後(米国の年間平均走行距離は1万4000マイル)に価値は低くなっている。
ブランド・モデル | 2023年9月価格 | 2024年8月推定下取価格 | 原価償却率 |
アウディ「e-トロンG」 | $83,991 | $64,360 | 23% |
メルセデス「EQE」 | $58,977 | $47,839 | 19% |
ボルボ「ポールスター2」 | $38,771 | $32,153 | 17% |
ポルシェ「タイカン」 | $131,840 | $100,123 | 24% |
まとめ
- EVの中には、特に最高級モデルの場合、1年走行後に50%も価値が下がるものもある。
- このような減価償却率の高さは、技術の急速な発展や航続距離に対する根強い懸念によって説明される。
- 損失を抑えるには、最近の中古モデルを購入するか、新車EVを長く乗り続けることだ。市場が成熟すれば、状況は安定する。
【参考】ワイアード誌のウェブ記事(2024年8月16日)は以下のURLで参照できる。
https://www.wired.com/story/evs-are-losing-up-to-50-percent-of-their-value-in-one-year/