米国の諸州で、EV所有者からの料金徴収の立法化があいついでいる。自然保護団体Sierra Clubで電気自動車イニシアティブを統括するGina Coplon-Newfieldらによると、すでにワイオミング、コロラド、ヴァージニア、ネブラスカ、ミズーリ、ワシントン、ノースカロライナ、アイダホ、ジョージア、ミシガンの各州が、電気自動車(EV)およびハイブリッド自動車(HEV)の所有者から年額50ドル(約5600円)ないし300ドル(約3万3000円)の料金を徴収する州法が成立し、施行がはじまっている。
2017年にはいってからも、インディアナ、サウスカロライナ、カンザス、テネシー、ニューハンプシャー、モンタナの各州の議会に同様の法案が上程されている。また、アリゾナ州とアーカンソー州の運輸局も、EVの所有者から料金を徴収する新たな制度を推奨している。
EV市場への影響
こうした州の動きは、EV市場に大きな影響をあたえるものと見られている。たとえば、ジョージア州は、かつてEVの購入者に最高5000ドル(約55万円)の税額控除を認めていた。
このとき、同州におけるEVの売上はカリフォルニア州に次いで全米2位だった。ところが、2015年にジョージア州はこの税額控除制度を廃止し、逆にEV所有者から年額200ドル(約2万2000円)の料金を徴収する制度に切り替えた。これにより、同州におけるEVの売上は80%下落した。
背景に石油業界からの働きかけ
EV所有者からの料金徴収の立法化が各州であいついでいる背景には、石油業界からの働きかけがあるという見かたが有力である。2016年2月、インターネット新聞のHuffington Postは、Koch Industriesなどの化石燃料業界が結成した団体が年間1000万ドル(約11億円)の予算をかけて、従来型燃料産業の振興とEVへの公的補助の廃止をめざして働きかけをおこなっていると報じた。
また、EV所有者からの料金徴収を支持する論者らは、EVが増えると、州が道路補修に使っているガソリン税が減収になると主張している。
しかし、これに対しては、米国内でのEVの普及率は全自動車の1%未満にすぎず、ガソリン税の減収のほとんどは内燃機関エンジン車の燃料効率改善によるなどとして、料金徴収支持者の主張を疑問視する指摘もある。