2024年9月1日(No. 2024w35-07)
国・地域:欧州・ロシア, ドイツ, 米州, 米国
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独VWグループの電池会社PowerCoと米QuantumScapeが全固体電池の事業化に向けて合意

独フォルクスワーゲングループ(Volkswagen Group:以降、VWグループと称する)は2024年7月11日、同社の電池会社であるPowerCoが米国でEV用の全固体リチウム金属電池を開発するQuantumScape(以降、QSと称する)とQSの技術による全固体リチウム金属電池を事業化する契約を締結した事を発表した。両社は、トップレベルの全固体リチウム金属電池に関する技術開発を推進しEVを大量生産するために協力する。今回の契約により、PowerCoはロイヤルティーを支払い年間40GWhまでのQSの技術を用いた全固体リチウム金属電池の生産が可能で、更に年間80GWhまで拡大するオプションも得た。80GWhの容量は、80KWhの電池を搭載したEV100万台分の搭載量となる。

PowerCoについて
2022年7月に独VWグループによって設立されたPowerCoは、ドイツのザルツギッター(Salzgitter)に年間生産能力40GWhのEV用電池工場を建設している。この工場は再生エネルギー源からの電力で100%稼働し、2025年から生産を開始する予定である。PowerCoは、EV用電池の生産に加え世界的な電池事業の責任を負い、電池のバリューチェーン全体に沿った活動を担当する。2024年8月時点でPowerCoは、スペイン、カナダでもEV用電池工場を建設していて、ドイツも含めた年間総生産能力は200GWhとなる。

QuantumScapeの全固体リチウム金属電池について
2010 年に設立された米国ベンチャー企業であるQS社は、EVに必要な急速充電、長寿命、より安全な電池を実現する固体セラミック電解質セパレータを開発し、特許を取得した。QSの技術は最初の充電時に負極に金属リチウムを生成させるため、電池の設計が簡素化され、製造コストが削減される。金属リチウムは、現在のリチウムイオン電池に使用されている負極材料に比べ10倍のエネルギー密度を持つ。また、固体セラミック電解質セパレータは不燃性なので、従来のリチウムイオン電池よりも安全である。


QS社全固体リチウム金属電池模式図
QuantumScape投資家向けプレゼンテーション資料(2024年7月29日)より

上記模式図の通り、全固体リチウム金属電池は製造時に負極材料を塗布する工程が無い(アノードレス)ため、製造コストが削減される。
QS社電池試験ラボでのプロトタイプ電池のサイクル試験(試験条件;C/3充電、C/2放電、放電深度100%)で、1000回サイクルでの容量保持率95%以上を達成している。
VWグループは、2012年からQS社に投資し協力関係にあり、今回の提携によりQSの技術を用いた全固体電池の事業化を推進する。

PowerCoとQuantumScapeの全固体電池事業化に向けた合意について、下記のURLより閲覧できる。
VWグループホームページPress Release
https://www.volkswagen-group.com/en/press-releases/powerco-and-quantumscape-announce-landmark-agreement-to-industrialize-solid-state-batteries-18494
QuantumScapeホームページEvents & Presentations
https://s29.q4cdn.com/884415011/files/doc_presentation/2024/07/QS-IR-Presentation-July-24.pdf

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