フランス下院、上院に続いてモビリティ基本法案を可決

フランス国民議会(下院)は2019年6月18日、モビリティ(注)基本法案を第一読会で可決した(賛成372、反対40、棄権144)。同法案は同年4月2日に上院で可決されている。同法案では、EUの目標、フランスの気候計画及び国家低炭素戦略(SNBC)と整合する形で、中期的な目標が次のように定められている。

  • CO2排出量を2030年までに5 %削減する。
  • 化石燃料を使用する自動車の販売を2040年までに終了する。

 

モビリティ基本法案では、これらの中期的な目標を達成するために、①比較的汚染の度合いが少ない移動手段(共同輸送や自転車)の普及を支援し、②クリーンカーへの移行を奨励する、との方針が定められている。また、そのためのツールとして以下の措置が示されている。

  • 輸送部門への国の投資を5年間で40%(134億ユーロ=約1兆6214億円)増額し、そのうち4分の3は鉄道部門に配賦する(新たに大規模プロジェクトを立ち上げるよりも既存の輸送手段の改善を優先)。
  • 2019年1月1日以降、低所得者に対し、また自宅から職場までの距離が遠い非課税世帯に対しても、クリーンカーへの車種変更時の補助金(prime)の額が従来の2倍となっている。
  • クリーンカーの購入時に支給されているボーナス(bonus)を継続する。
  • 交通・輸送産業がより効率的なモビリティへと移行する上での目標を達成する。
  • 電気自動車の公共充電スタンドの数を2022年までに5倍に増加させる。
  • 日常的な移動手段として相乗りを奨励する。具体策としては、地方自治体が相乗りに助成金を交付する、主要都市周辺の幹線道路に相乗り及びクリーンカーの専用道路を設置する、出勤に相乗りを利用する給与生活者に対して雇用主が年間で最高400ユーロ(約4万8400円)を支給できる制度を構築する、等々。
  • 交通手段に占める自転車の比率を現在の3 %から2024年までに9 %に増加させる計画Plan véloを実行する。
  • 航空・海事セクターを含めたエコロジー転換を推進するフランスの意思を、欧州、さらに国際社会に向けて発信する。

 

(注)モビリティ(英mobility/仏mobilité)は一般に「移動手段」を意味するが、この場合は特に「公共交通機関等の多様な移動手段を活用することにより、個人的にも社会全体としても望ましい状態へと移行することを促す施策(モビリティ・マネジメント)」の意である。