EU ELV指令改正:公開協議がスタート、法案提出は2022年第4四半期の予定

欧州委員会は2021年7月20日、「使用済み自動車(ELV)指令(2000/53/EC)」の改正に向けた公開協議を開始した。20年前に制定されて以来、まだ一度も実質的な改正が行われていないELV指令については、欧州グリーンディールの目標との整合性を確保するために、そして未解決の問題や新たな課題(行方不明車両、使用材料の変化、EVの増加など)に対応するために、抜本的な見直しが迫られている。また、欧州委員会が今年3月に公表した、「Evaluation(評価)」結果(【過去の関連トピック】(1))は、あらためて同指令の問題点を浮き彫りにした。今回の公開協議は、このEvaluationの結果を踏まえ、「使用済み自動車の分野に関心を持つ市民」と「同分野への特定の知見や関心を有する経済事業者、NGO、行政機関等」という二つのステークホルダーグループから広く意見を募ることを目的に、2021年10月26日までの日程で実施されている。詳細は以下のURLで閲覧可能である。

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12633-End-of-life-vehicles-revision-of-EU-rules_en

 

影響評価が進行中

2021年6月23日~25日にジュネーブで開催された「国際自動車リサイクル会議(IARC 2021)」の基調講演の一つとして、欧州委員会・環境総局のArtemis Hatzi-Hull氏がELV指令の改正に向けた進捗状況を報告した(情報源:2021年7月5日付けAuto Recycling World)。これによると、欧州委員会は現在、前出のEvaluationの追跡調査として、影響評価(impact assessment)に取り組んでおり、その主な調査項目は以下の通りである。

 

  • 実施を妨げている要素の除去
  • 二輪車と大型トラックを対象に追加
  • 拡大生産者責任(EPR)スキームの本格化
  • 「行方不明車両」問題:車両トレーサビリティシステムの改善
  • 中古車/ELV輸出の問題への取り組み
  • 執行メカニズムの強化(検査と報告の義務化)

 

  • 技術の進歩や将来的な課題への対応
  • 自動車のエコデザインの改善
  • 野心的、具体的で、かつ測定可能なリユース/リサイクル目標の設定(マテリアルベースのアプローチによる)。
  • リサイクル材の使用義務化
  • 製品寿命の延長(修理、リマニュファクチャリング、リユース)

 

またArtemis Hatzi-Hull氏は、ELV指令と「自動車の型式認証におけるリユース性(reusability)、リサイクル性(recyclability)、リカバリー性(recoverability)に関する指令2005/64/EC 」(通称「RRR指令」)の間の関連性を考慮して、これら2つの指令の共同レビューが実施されることになるとの見通しを示した。

さらに、続くパネルディスカッションでは、指令(Directive)から規則(Regulation)に置き換わる可能性についての質問があり、同氏は、「自動車に循環性を持たせることは欧州委員会の優先事項の一つであるため、『規則』を採用する可能性は高く、それが、欧州委員会が目指しているオプションである」と答えた。

 

今後の展開とスケジュール

  • 2021年7月20日~2021年10月26日:公開協議開催
  • 2021年末:ステークホルダーワークショップ開催。公開協議の結果発表
  • 2022年第4四半期:欧州委員会による採択