スイス連邦政府は現在、電動車購入を対象とした補助金は支給しておらず、またこの先もこれを支給する予定はないことを明らかにしている(この旨は、2018年12月18日の官民共同「エレクトロモビリティロードマップ2022)」署名時に発表されている)。しかし、州政府レベルでは、補助金支給制度を導入する動きが始まっている。
南部のヴァレー州(フランス語: Canton du Valais、ドイツ語: Kanton Wallis)政府(Staatsrat)は2019年11月、「ヴァレー州 持続可能な発展のためのプログラム2020(Programms für nachhaltige Entwicklung 2020)」を採択した。同プログラムには、総予算700万フラン(約7億6700万円)規模の、新しい電動車の購入と充電ステーションの設置を対象とした補助金支給制度が含まれている。主要ポイントを以下にまとめる。
電動車購入補助金
- 支給開始日:遅くとも2021年1月1日以降。2年間の期限付き。
- 対象:新しい電気自動車(BEV)あるいはプラグインハイブリッド自動車(PHEV)を購入する個人ならびに企業
- 支給額:平均3000フラン(約33万円)
- 支給条件:
- 支給対象となる新車が、少なくとも2年間は同一人物の所有下にあること。
- 所有者の居住地がヴァレー州内であること。
ヴァレー州政府 安全性・インフラ・スポーツ担当のFrédéric Favre大臣はこれに関連して、「州内で登録されている新車のうち、現在、新しい電動車購入補助金の受給要件を満たすのは3.2%です。州の目標は、2023年までにこの割合を10%に引き上げることです」と話している。
充電インフラ関連
- 個人による充電ステーション設置に対しては、平均500スイスフラン(約5万5000円)の補助金を支給する。
- また、2020年以降、州内におよそ100か所の公共充電ステーションを建設する。2022年までには、主要幹線道路の近辺、公共駐車場、大規模建物、あるいは観光地にステーションが設置されている予定となっている。
- 将来的には、すべての新設の民間/公共駐車場を対象に、充電ステーションを設置できるように設計することを義務付けることになっており、このための州法の改正が間近に迫っている。
他州の動向
スイス国内では、ヴァレー州の他にトゥールガウ州及びティチーノ州でも同様の購入補助金が支給されている。トゥールガウ州の支給額は4000スイスフラン(約44万円)であるが、支給条件はヴァレー州と比べると厳しくなっている。またティチーノ州では、今夏以降、電気自動車の購入者は、州政府による2000スイスフラン(約22万円)の補助金に加え、自動車メーカーが提供するプレミアムとして同額を受け取っている。