スイスのスタートアップ企業Innolith社が航続距離1000kmを可能にする無機電解質を用いた電池の研究開発を進めており、今後3~5年以内の商品化を目指している。
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スイスのスタートアップ企業Innolith社が航続距離1000kmを可能にする無機電解質を用いたリチウムイオン電池の研究開発を進めている。テスラ社が現在使用してるパナソニック社製のリチウムイオン電池「18650」は重量エネルギー密度が250Wh/kg程度であるが、Innolith社が開発中の電池は1000Wh/kgで約4倍の性能を持つ。米テスラ社が開発中の新型電池「2170」にも勝ると言われている。
Innolith社の本拠地であるバーゼル市は、今後2025年までにゴミ収集車の電化を90%進める目標を立てている。同社はドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州に研究開発ラボを持ち、数年前より、硫酸、炭酸、ホウ酸等の弱酸性の無機電解質の特性について研究を続けてきており、発火しない、またコバルト等希少金属に依存しない、などの利点を持つ電池技術の開発に成功した。同社はまた、2018年末より蓄電池技術の試験を実施しており、米国においては電力需要ピーク時の調整に同社の電池が使用されている。従来のリチウムイオン電池の10~100倍の寿命に相当する5万5000回のライフサイクルを持ち、電力網用蓄電池のコストの大幅な削減を可能した。
同社は、まずはドイツの研究開発ラボでパイロット電池を生産し、続いてバッテリー製造企業及び自動車メーカーとの特許契約を通じて大量生産化を図る計画である。「Energy Battery」という商品名で今後3~5年以内に製品化する目標を立てている。
なお、米国のEVメーカー「フィスカー」は同様の時期にエネルギー密度の高い新型全固体電池の商品化を目指している。また、欧州連合は充電時間90分で航続距離1000kmを可能にする電池の開発を目指す欧州コンソーシアムによる「EVC1000」プロジェクトを支援している。