EU理事会が輸送、エネルギー、デジタル部門支援制度の延長法案で基本的立場示す

EU理事会は2018年12月3日、欧州連結制度(CEF:Connecting Europe Facility)を次のEU中期予算期間(2017~2027年)も存続させるための規則案(COM/2018/438)について、全般的方針(GA:General Approach)を部分的にまとめた(下記URL)。

http://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-15146-2018-INIT/en/pdf

CEFは2014年以来、輸送、エネルギー、デジタル部門で欧州をつなぐネットワークへの投資を支援しており、その成果を踏まえて欧州委員会は次の予算期間も投資を加速させ、官民双方から資金を引き出すべく、計422億6500万ユーロの予算をつける今回の法案を2018年5月に提出した。

GAは、欧州議会が第一読会で法案の修正案を票決する前にEU理事会が非公式に示す基本的立場で、審議を円滑化する狙いがある。欧州議会が修正案をまとめると(2018年12月12日の予定)、EU理事会も正式な立場を採択し、これらに基づき両機関の代表が欧州委員会を交えて3者協議に入る。その結果、妥協案がまとまり、両機関で正式に採択されれば法案は成立する。なお今回のGAが“部分的”なのは、財政および分野横断的な案件が除外されているからで、これらは「多年次財政枠組み(MMF:Multiannual Financial Framework)」というEU予算全体を扱う大きな枠組みの中で交渉されている。

 

EU理事会の現議長国オーストリアのHofer運輸相は「CEFはその価値を実証してきたが、我々は、この制度が確実に進化を続け、より標的を絞るよう望んでいる」と述べた。プレスリリース(下記URL)によると法案の要点は次のとおり。

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2018/12/03/supporting-transport-digital-and-energy-sectors-council-agrees-its-position-on-connecting-europe-facility/

  • 輸送、エネルギー、デジタル部門で欧州をつなぐネットワークを開発・最新化・完成させることを目的に、CEFからの資金提供の形態とルールを規定。
  • 輸送部門では、安全なモビリティを促進し、スマートインフラを奨励する。汎欧州輸送網(TEN-T)については越境路と連結路の拡充を優先する。また予算の一部は域内での軍事機動性の改善を視野に軍民両用の輸送インフラの開発に割り当てる。
  • エネルギー部門では、欧州エネルギー市場のさらなる統合への貢献、国境や部門を越えたエネルギーネットワークの連動性の改善、脱炭素化の促進、供給の安全保障の確保を目的とする。再生可能エネルギー分野の越境事業への支援予算も設ける。
  • デジタル・コネクティビティ(DC)の分野では、対象範囲を拡大し、信頼できる手頃な高・超高容量ネットワークへのユニバーサル・アクセスが経済・社会全般のデジタル化を左右するという事実を反映させる。DCは社会・経済・領土的分断を埋める決定的要因とも見なされている。必要なインフラの建設・更新のための投資の大半は、民間が行うべで、CEFが支援する事業は、市場ベースの開発が現実的でない分野や市場原理が機能しなかった分野に対処するものとする。

●EUの施策の有効性を高め、実施費用を最適化するため、輸送、エネルギー、デジタル部門の相乗効果にも重点を置き、ネット接続され自動化されたモビリティや代替燃料などの分野への介在を可能にする部門間作業プログラムの採用も規定。