EU公共調達クリーン自動車比率の導入に関する審議:欧州議会と理事会が暫定合意

2009年6月4日に施行された「クリーンでエネルギー効率の良い道路運送自動車の促進に関する指令2009/33/EC」は、クリーン自動車の市場展開促進を目的として、公官庁等が自動車を調達する際の調達基準を定めている。欧州委員会が2017年11月に提出した改正指令案(COM(2017)0653)には、新たに加盟国別の「最低調達目標(minimum procurement targets)」(公共調達全車両に占めるクリーン自動車の比率を自動車の種類及び各加盟国別に定めたもの)が盛り込まれている。2018年10月には欧州議会がその修正案を採択したが、その後、審議は以下に示すように大きく前進している。

 

  • 2019125日:EU理事会が交渉方針を発表

ポイントは以下の通りである。

  • 適用範囲の拡大:現行指令は、公共近距離旅客輸送用の交通手段の調達のみを対象としているが、これをリース契約や割賦購入(Hire Purchase)の対象車両、そして長距離輸送車両やごみ収集車にも拡大する。
  • 「クリーン自動車(clean vehicles)」の定義付け:軽量自動車(light-duty vehicles)ではCO2排出量と大気汚染物質エミッションに基づいて定義し、重量自動車(heavy-duty vehicles)では代替燃料(電気、水素、バイオメタンを含む天然ガス)を使用するものとする。
  • 最低調達目標:2025年向けと2030年向けに分けて、軽量自動車、トラック、バスの最低調達目標を定める(注:具体的な目標値は言及されていない)。
  • 進捗状況の報告義務:EU加盟国は2026年以降、3年ごとに、国内の実施状況を欧州委員会に報告する義務を負う。

 

プレスリリース原文(英語、1ページ)

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2019/01/25/stimulating-the-market-for-clean-vehicles-council-ready-to-start-talks-with-parliament/pdf

 

  • 2019211日:欧州議会とEU理事会が暫定合意達成

 欧州委員会は2019年2月12日、欧州議会ならびにEU理事会の代表者がこの前日11日に改正法案についての暫定合意に達したと発表した。ただし、合意の内容に関するEUの公式な発表は、2月13日現在まだ確認されていない。欧州の持続可能な交通を主題とするNGOであり、確かな情報筋を持つことで知られるTransport & Environmentが、合意された最低調達目標値を2月11日付けのプレスリリース(以下URLに原文あり)で報じているので、参考までにそれを以下の表にまとめる。目標値に幅があるのは、これらが住民数ならびに国内総生産(GDP)に応じて加盟国別に設定されているためである。

https://www.transportenvironment.org/press/eu-deal-will-see-roll-out-cleaner-public-buses-faster-uptake-zero-emission-technology-needed

 

種類(すべて新車) 対象 2025年目標値 2030年目標値
バス 目標値の2分の1は電動バスで、また残りの2分の1はLNGやCNGなどを動力源とする「クリーンバス」(代替燃料補給インフラ配備に関する指令(2014/94/EU)の定義に基づく)でカバーする。 24~45% 33~66%
ごみ収集トラック、その他の重量車 低あるいはゼロエミッション車 6~10% 7~15%
地方自治体及びPublic Companiesが調達する軽量自動車 2025年:CO2排出量50g/km以下の自動車

2030年:ゼロエミッション車

18.7~38.5%

(出所:Transport & Environmentの情報をもとにEnviX作成)

 

今後の展開とスケジュール

改正法が成立するには、まだこれから欧州議会及び理事会が暫定合意の内容を正式に承認しなければならない。なお、EUの政策協議専門オンラインメディア “EurActiv” によると、欧州議会における最終採決は2019年4月6日に予定されているとのことである。