ルクセンブルクが公共交通機関無料化へ、ブリュッセル首都圏地域でも議論始まる

大気汚染対策や交通渋滞の緩和を目的とした公共交通無料化の試みが欧州で広がっている。ルクセンブルク、そしてベルギーの首都ブリュッセルにおける動向を報告する。

 

  1. ルクセンブルク

ルクセンブルクでは2018年10月の総選挙の結果を受けて12月5日、グザビエ・ベッテル首相(Xavier Bettel、二期目)が、自ら率いる中道右派の民主党(DP)、社会労働党(LASP)、そして緑の党(déi gréng)による三党連立を維持する形で新政権を発足させた。新政権は環境政策の強化を図ることを公約しており、その一環として、公国内のすべての公共交通機関を2020年3月から無料化する。

2019年1月21日、同国のFrançois Bausch交通大臣は、この計画に関する記者会見を行った。Bausch大臣は、人々の行動様式を変え、自家用車利用から公共交通機関利用への転換を図るには、「定時性」と「サービスの質」が決定的な要素であるとし、このための首尾一貫した継続的な投資が必須であるとの見方を示した。そして、投資計画の詳細を提示した。2018年から2023年の間の鉄道部門への投資総額は22億1200万ユーロ(約2766億円)。CLF(Société Nationale des Chemins de Fer Luxembourgeois、ルクセンブルク国鉄)は2019年、過去最高額である4億ユーロ(約500億円)の資材調達契約を締結している。そして、主にバス路線を運営するRGTR(Régime général des transports routiers)でも、地域バス路線の序列化や最適化、さらに日祝祭日の乗り換え接続の改良等を含む包括的な改革を進める。また、電気バスの導入を通して、2030年までにゼロエミッション化を実現することも目標に据えられている。

本件に関する政府プレスリリース(ドイツ語、フランス語)は、以下のURLで閲覧できる。プレゼンテーション資料(フランス語のみ)も同サイトからダウンロード可能である。

https://gouvernement.lu/de/actualites/toutes_actualites/communiques/2019/01-janvier/21-bausch-transport.html

 

  1. ブリュッセル首都圏地域

さらに、欧州で最も大気汚染が深刻な都市ランキングでは決まって上位に入るブリュッセルでも、公共交通機関の無料化に関する議論が始まっている。

ブリュッセルを中心に路面電車・地下鉄及びバスなどの公共交通機関を運行するブリュッセル首都圏交通会社(STIB)の新副社長に就任したLotfi Mostefa氏(社会党所属議員)は2019年1月、就任後初のインタビューの中で、住民による夜間あるいは週末の公共交通利用を無料化する案に言及した。また、同氏が所属する社会党(ブリュッセル首都圏地域政府の連立与党)は、時間を制限せずに毎日無料とする案を推している。同党が提案している適用開始時期は2024年である。試算では、全住民を対象とした無料化に必要なコストは2億ユーロ(約251億円)。これはSTIBだけでは負担しきれない金額であり、公金の投入は必須と見られている。

なお、ブリュッセル首都圏地域政府は既に2018年、「大気汚染レベルが閾値を超えた場合に」公共交通機関利用を無償化する措置を承認し、同措置は同年夏に発効している。