アイスランドの首都レイキャヴィーク(Reykjavík)市の議会は2019年5月、市内に75か所あるガソリン・軽油供給スタンドの数を、2025年までに37カ所へ半減する計画を承認した。当初、同計画は2030年までに実施される予定であったが、5年間前倒しされた。
背景には政府の新しい気候戦略
同計画の背景には、昨年9月にアイスランド政府が発表した、“Iceland’s Climate Action Plan for 2018-2030“ と題する新しい気候戦略(詳細は、以下の政府ウェブサイトを参照)がある。
https://www.government.is/topics/environment-climate-and-nature-protection/climate-change/
同戦略は、(1) パリ協定の下での2030年向け目標(1990年比で40%削減)と、(2)「2040年までにアイスランドをカーボンニュートラルとする」という政府目標の実現に向けて、34の具体的な施策を提示している。この中には、「2030年以降、新しいガソリン車あるいはディーゼル車の登録を禁止する」計画も含まれている。政府は、これに並行して、電気自動車(EV)向け充電インフラの整備やEV購入助成の拡充にも努めるとしている。
アイスランドとEV
アイスランドの国土面積は、10.3万平方キロメートル(北海道の面積の1.2倍程度)である。国内人口は34万8,580人(2017年12月アイスランド統計局)で、その3分の1が首都レイキャヴィークに集中している(首都圏を含めると3分の2)。同市では、住民の通勤距離が比較的短いため、航続距離の制約というEVが抱える一つの短所もあまり問題にはならないと見られている。また、アイスランドの電力生産は、現時点ですでに、ほぼ10%再生可能エネルギーで賄われている。さらに、離島という、その地理的条件のせいで、ガソリン価格が比較的高いことも、EV導入には追い風となると見なされている。以上のように、同国にはEV導入のための好条件が揃っていると言える。
なお、テスラのイーロン・マスクCEOは昨年5月、アイスランド市場への参入を急ぐ意向を発表した。そして、レイキャヴィーク市内で準備中の、テスラ販売店及びサービスセンターでは、現在スタッフの募集が行われている。