2019年3月18日、EU理事会のルーマニア議長国の主催により、同国のクラヨーヴァで自動車産業フォーラムが開催された。そしてこのフォーラムの場で、欧州委員会のエルジビエタ・ビェンコフスカ(Elżbieta Bieńkowska)域内市場・産業・起業・中小企業担当委員がルーマニア議長国に、『クリーン自動車への道筋(Roadmap towards clean vehicles)』と題するロードマップを手渡した。原文(英語、3ページ)は、以下のURLでダウンロード可能である。https://ec.europa.eu/docsroom/documents/34503
ユンカー委員長率いる現在の欧州委員会は、低・ゼロエミッションのモビリティへの移行を導いてきた。一連の取り組みの中核を成すのが、“Europe on the move”というタイトルの3つの法案パッケージ、そして代替燃料、電池製造、さらにコネクティド・ドライビングや自動運転を促進するための数々の施策である。
今回提出されたロードマップには、クリーン自動車への完全な転換の実現に向けて、欧州委員会、EU加盟国、そして業界が講じるべき、具体的な措置が示されている。概要は、以下の通り。
- アクション1:ディーゼルゲートの再発を許さない
- 欧州委員会及び加盟国:自動車の型式認証と市場監視に関する規則(EU)2018/858の効率的な実施。特に市場監視関連条項。
- RDEテストを実施するための能力開発
- 独立した第三者機関によるテストの促進
- 独立試験施設使用に関わる、加盟国とEU共同研究センター(JRC)間の協力
- 各種アクションについてのForum(注:規則(EU)2018/858の下で設置された、法規執行のためのフォーラム)を通した調整。例えば、補助エミッションストラテジー(AES)関連など。
- モニタリングの手法に関する研究(例:リモートセンシング)
- アクション2:保有車両をクリーン化する
- 業界/加盟国:ハードウウェア修理の奨励
- 欧州委員会:修理に関する統一ルールの実現可能性調査
- 欧州委員会:新しい排ガス基準の実現可能性調査の継続
- 業界/加盟国:保有車両の買替え推進(スクラップインセンティブ)
- 欧州委員会/加盟国:定期車検(PTI)や公道走行適性検査に関わる規定の強化。改ざん検出など。
- アクション3:ディーゼルゲート関連のリコールを遂行する
- 加盟国は、強制リコール発動から2年以内に最低90%のリコール率を確保するための措置を講じなくてはならない。
- フォルクスワーゲンEA189関連自動車のリコール
- EU全体のリコール率を、2019年末までに少なくとも90%に引き上げる。
- 加盟国:国内のリコール率を2019年末までに少なくとも80%に引き上げることを目指す。
- アクション4:整合的なリコールを確実に実施する
- 加盟国:強制リコール発動の検討
- 加盟国:定期車検(PTI)、再登録(中古車)、保険や登録の更新、あるいは登録抹消時などに、修理済証明の提示要求
- 欧州委員会:Forumを通じて、リコールに関するベストプラクティス・ガイダンスを策定・発行
- アクション5:リコール対応に関する透明性を確保する
- 業界/加盟国:あらゆる是正措置に関する、欧州委員会への情報提供の改善
- 加盟国:リコール情報プラットフォームに毎月入力
- 欧州委員会:リコール進捗状況に関する定期レポートの発行
- アクション6:消費者(自動車所有者)に情報を提供する
- 業界:ドライバー向けリコール関連インセンティブの強化。信頼構築措置、無料のオイル交換、サービス、送迎手配、代車提供、対象コンポーネントの保証期間延長など。
- 加盟国:消費者向けコミュニケーションの改善
- 欧州委員会/加盟国/NPO:消費者の権利とその行使に関する意識向上
- 欧州委員会:消費者保護協力(CPC)ネットワークを通した協力の促進
今後の展開とスケジュール
欧州委員会は今後、加盟国と共に、本ロードマップの実施に取り組む。なお、5月末に開催されるEU競争担当相理事会では、本ロードマップに関する加盟国間の政治レベルでの対話を進めるための、プラットフォームの提示が予定されている。
その他の関連文書
欧州委員会は、本ロードマップに合わせて、ディーゼルゲート発覚からこれまでのEUの対応をまとめたファクトシート(英文、2ページ)も発表した。原文は、以下URLを参照。