欧州自動車工業会(ACEA)は2019年5月9日、EUにおけるECV(electrically-chargeable vehicles、以下の注を参照)の価格のアフォーダビリティ(affordability、「価格妥当性」、「購入容易性」、「入手可能性」などの訳語あり)と実際のEV普及率の間の相関関係を示す最新データを発表した。
注)ECV (electrically-chargeable vehicles)には、バッテリー式電気自動車(BEV)のほかに、プラグインハイブリッド車(PHEV)、レンジエクステンダーEV(EREV)が含まれる。(“ACEA position paper on electrically chargeable vehicles”, 23 November 2012の定義による)
ACEAによる主な所見は、以下の通り。
- EU全体では、2018年新車登録台数の0%がECVであった。
- EU全28加盟国の半分では、ECVの市場シェアがまだ1%以下である。
- ECVの市場シェアが1%以下であった国では軒並み、一人当たりの国内総生産(GDP)が2万9000ユーロを下回っていた。これに該当するのは、そしてリトアニア、ブルガリア、スロバキアなどの中東欧の新加盟国が主だが、スペイン、イタリア、ギリシャも含まれている。
- これとは対照的に、ECVの市場シェアが5%以上を示したのは、フィンランド、オランダ、スウェーデンなど、一人当たりのGDPが4万2000ユーロ以上の加盟国のみであった。
- ラトビアでは、昨年販売されたEVの台数はわずか93台。また、ポーランドにおけるECVの市場シェアはEUで最も低く、たったの2%であった。
- 中東欧諸国と西欧諸国が明らかに分断されていることだけでなく、顕著な南北格差(例:ギリシャ3%、イタリア0.5%)も確認された。
参考:EU内でECV市場シェアが最も低い国のランクング(2018年)
順位 | 国名 | ECV
市場シェア |
ECV販売台数 | 一人当たりGDP |
1 | ポーランド | 0.2% | 1,324台 | €12,900 |
2 | スロバキア | 0.3% | 293台 | €16,600 |
3 | ギリシャ | 0.3% | 315台 | €17,100 |
4 | チェコ共和国 | 0.4% | 981台 | €20,500 |
5 | リトアニア | 0.4% | 143台 | €15,900 |
(出所:欧州自動車工業会のデータをもとにEnvix作成)
参考:EU五大自動車市場のECVマーケット市場シェア(2018年)
自動車市場規模順位 | 国名 | 新車販売台数 | ECV
販売台数 |
ECV
市場シェア |
一人当たりGDP |
1 | ドイツ | 340万台 | 67,658台 | 2.0% | €41,000 |
2 | 英国 | 240万台 | 59,947台 | 2.5% | €37,600 |
3 | フランス | 220万台 | 45,623台 | 2.1% | €36,200 |
4 | イタリア | 190万台 | 9,731台 | 0.5% | €29,000 |
5 | スペイン | 130万台 | 11,810台 | 0.9% | €26,200 |
(出所:欧州自動車工業会のデータをもとにEnvix作成)
EUでは、今年4月25日、乗用車と小型商用車を対象とした新たなCO2排出基準を定める規則(EU)2019/631が公布された。同規則の下、自動車メーカーは、EUで販売する全モデルの平均CO2排出量を、2021年目標比で2025年に15%削減、また2030年に35%削減しなければならない。そして、これを達成するためには、EVをはじめとする代替駆動自動車の販売台数を大幅に増やすしかない。このように法規制の厳格化が進む傍らで、今回ACEAが提示したデータは、2018年のEU新車登録台数に占めるECVの割合はまだ2.0%に過ぎず、特に新加盟国や南欧諸国におけるECVの市場シェアはまだきわめて低いという現実を突きつけた。ACEAは今回、「各国政府は、最新の低・ゼロエミッションテクノロジーを適切な負担において入手できるようにすることを、優先事項の一つに据えて取り組む必要がある」と訴えている。
関連文書
2019年5月19日発行ACEAプレスリリース “Electric car sales not taking off in lower-income EU countries, new data shows”