英国の気候変動委員会「2040年以降内燃機関禁止では手遅れ、遅くとも2035年に」

英国の気候変動委員会(以下の注を参照)は2019年5月2日、「ネットゼロ‐地球温暖化を止めるための英国の貢献」(Net Zero – The UK’s contribution to stopping global warming)と題するレポート(英語、277ページ、原文は以下のURLで参照可能)を発表し、「英国は、温室効果ガス排出量を2050年までに『ネットゼロ(正味ゼロ)』とするための野心的な目標を設定し、その達成に向けて積極的に取り組んでいかなければならない」とする提言を行った。そして、この一環で、「2040年以降、ガソリン車およびディーゼル車の販売を終了する」という同国政府のコミットメントについて、2040年では遅すぎると評価し、遅くとも2035年、そして可能であればさらに前倒しすることを推奨した。

https://www.theccc.org.uk/wp-content/uploads/2019/05/Net-Zero-The-UKs-contribution-to-stopping-global-warming.pdf

 

注)英国の気候変動委員会(Committee on Climate Change、以下「CCC」と言う)は、同国で2008年に制定された「気候変動法(Climate Change Act)」の下で設立された、独立した法定組織である。その目的は、英国政府及び地方分権政府に排出削減目標に関する提言を行うと共に、議会に温室効果ガスの削減や気候変動対策に関する進捗状況を報告することである。詳細は、以下のCCCウェブサイトを参照のこと。https://www.theccc.org.uk/

 

内燃機関自動車(internal combustion engine、以下「ICE」と言う)と電気自動車(EV)に関する提言内容は、レポート198~201ページ(Chapter 6: Delivering a net-zero emissions target for the UK/4. Policy pre-conditions of a net-zero target/(b) Bringing forward the electric vehicle switchover)に記述されている。要旨は以下の通り。

 

国内で保有される軽量自動車全体を2050年までに超低排出自動車(ULEV)に切り替えるためには、どんなに遅くとも2035年までには、すべての新車(乗用車と小型商用車)をULEVとしておく必要があるだろう。可能であれば、もっと早い時期でのICE販売終了が望ましい(例えば2030年)。そうすれば、2050年の温室効果ガス排出量削減につながる上に、大気質の改善効果も期待できる。さらに、財政的にも有利である(最後の点に関する根拠は、レポート201ページの図6.3 “A 2030 switchover to electric vehicles would save more money than a 2040 switchover” に示されている)。

 

このような観点から、CCCは、以下の提言を行っている。

  • 政府は、新しいICE(乗用車と小型商用車)の販売終了を遅くとも2035年に、そして可能であればさらに早い時点に前倒ししなくてはならない。さらに、その対象範囲を、すべてのガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン搭載車(乗用車と小型商用車)に拡大しなくてはならない(報告者注:すなわち、「プラグインハイブリッド車も販売禁止の対象とするべき」と解釈できる)。また、オートバイも含めること。
  • おそらく2020年代中頃までには、消費者がEVを所有するのに要するコストは、ICEのそれに匹敵するようになる。それまでの間は、EV初期市場をサポートするための財政的インセンティブが必要であろう。また、国内保有自動車の完全電動化に備えて、十分な数の充電ポイントを確保すべく、充電インフラ整備の展開をモニタリングする必要がある。

 

なお、英国放送協会(BBC)の報道によると、英国交通省はすでに、ICE販売終了期限を早める可能性を示唆しているという。参考までだが、スコットランド自治政府は2017年9月に、2032年以降、新車登録の対象を電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド自動車(PHEV)に限定する方針を発表している。