英国で、プラグインハイブリッドカー(PHEV)の販売が急速に落ち込んでいる。英国自動車製造販売者協会(SMMT)が2019年6月5日に公表したデータ(URL:https://www.smmt.co.uk/2019/06/may-ev-registrations-2/)によると、5月のPHEV販売台数は2362台で、前年同期比40.6%減を記録した。ちなみに、2019年1月~5月の累計は前年同期比25.1%減となっている。
2018年秋からPHEVは購入補助対象外
こうした急激な販売減少の原因は、昨年秋に実施された、EV等の購入補助金の改定である。英国政府は、超低排出自動車(ULEV)の販売を促進するために、2011年に「プラグイン・カー助成スキーム(Plug-in Car Grant」を導入し、開始から7年間で16万台以上のULEVの購入をサポートしてきた。そのうち10万台はPHEVであったが、政府は2018年10月に同スキームの改定を行い、支給金額を全般的に引き下げると共に、PHEVを実質的に同プログラムの対象から外した。
三菱自動車はPHEVユーザーによる充電実態についての調査結果を公表
この措置を受け、英国の自動車業界は、現在PHEV向けの補助金を復活させるための大々的なキャンペーンを展開している。三菱自動車もそうしたメーカーの一つである。同社の「アウトランダーPHEV(Outlander PHEV)」は、英国で最も売れているPHEVであり、国内でおよそ4万5000台が走行している(同社調べ)。同社の欧州部門は2019年5月9日、アウトランダーPHEV所有者における充電の実態に関する委託調査(実施主体:Kadence International)の結果を、“Plug-in hybrid owners really do plug in”と題するプレスリリース(原文URL:https://www.mitsubishi-media.co.uk/en-gb/releases/1476)で公表した。その要点を以下に挙げる(斜線部分は、同社の見解)。
- 所有者全体の68%が「毎日充電する」と答え、90%以上が「少なくとも週に2~3回は充電する」と答えた。
⇒「PHEVはめったに充電されない」とする通説に相反する。
- 所有者の97%が通常は自宅で充電すると答え、公共の充電ポイントを使用しているドライバーはわずか23%であった。
⇒「電気自動車(EV)の充電施設へのアクセスが、PHEVによって妨害されている」という誤った認識を覆している。
- 所有者全体の25%が、「次の自動車購入時には、純粋なEVを検討する」と答えた。
⇒ 「2040年までに内燃機関搭載自動車の販売を禁止する」という政府目標を果たすのに、ハイブリッド自動車を所有した経験が役立つ可能性があることを示唆している。
運輸担当大臣は「PHEV向け購入補助金支給の復活はない」
一方、2019年5月17日付けの英自動車専門誌autocarは、当時のJesse Norman運輸担当閣外大臣(minister of state for the Department for Transport)(注:同氏は、2019年5月23日に同職を解任され、主計長官 (Paymaster General)兼 財務担当政務次官 (Financial Secretary to the Treasury)に任命された)が同誌取材に応じ、「英国政府はインセンティブの焦点を電気自動車に絞る方針で、PHEV向けの購入補助金支給を再開する予定はない」旨を追認したと報道した。取材の中で挙げられたその根拠は、
- 政府は、変わりゆく市場動向に対応すべく、納められた税金を有効に使わなければならない。
- 所有者はPHEVを充電していない。結果、環境上のメリットを反故にし、PIGGを弱体化させた。
という二点。二点目の根拠は、オランダのある調査報告に依拠したものとされているが、政府の決定が同報告によるデータに基づいて下されたかどうかについては、Norman前大臣は回答していない。