ドイツ連邦政府と自動車業界、「充電インフラ基本計画」策定で合意

2019年6月24日、ドイツ連邦首相府において、連邦政府、自動車メーカー、そしてサプライヤーの代表が一堂に会し、「自動車サミット(Autogipfel)」が開催された。

 

背景

CO2排出規制値95g/kmの適用開始が2021年に迫る中、ドイツの自動車業界は、電動車の開発、購買、そして製造に巨額の投資を行っている。そして現在、業界では、連邦政府に対して、エレクトロモビリティへの移行に向けた政策を強化すると共に、迅速な対応を求める声が高まっている(注:ここで言う「迅速」は、「向こう数か月以内」を意味している)。

例えば、フォルクスワーゲンのeモビリティ担当取締役であるトーマス・ウルブリッヒ(Thomas Ulbrich)氏はこの6月上旬、「ドイツには『エレクトロモビリティ基本計画(Masterplan Elektromobilität)』が必要である」と発言した。同計画が取り上げるべき最重要領域として、まずは充電インフラ整備、さらに電動車へ転換に伴って国内自動車産業全体で生じる「変革過程(Transformationsprozess)」(例えば、従業員の再教育や訓練など)への対応を挙げている。

特に充電インフラ整備は、2020年に市場投入予定の新世代EV「I.D.」シリーズの準備過程で、同社が「問題領域」としての認識を強めている分野である(注:同社は、2025年までに欧州の自社生産拠点に3万6000の充電ポイントを設置し、充電インフラ拡張に約2億5000万ユーロを投資する計画を6月上旬に発表したばかり)。

また、BMWも、電動車充電用電力に対する税優遇措置の導入などを要請している。

 

唯一の成果は「充電インフラ基本計画」の共同策定

以上のような背景で開催された今回のサミットに対し、業界側からの期待は相当高まっていた。一方の連邦政府側だが、6月20日に政府報道官が、「(同サミットはあくまでも、)業界との『対話のプロセスの導入部』である」と発言するなどして、業界の期待を抑えようとする意図が垣間見えた。そして事実、同サミットは結局、具体的な施策に関する結論をほとんど出さずに終わった。

唯一の成果と言えるのが、官民共同で「充電インフラ基本計画」を策定すると言う合意である。財源を含む、その具体的な内容はまだ確定しておらず、この秋に開催予定の次回サミット以降に持ち越されることになったが、自動車メーカーやサプライヤーが、電動車向け充電網構築に関する議論に参加することができる可能性が出てきた。

 

「充電インフラ基本計画」のその後の展開

その後6月26日には、この充電インフラ基本計画の具体像が一部明らかになった。連邦政府は、EV普及を阻む「(ユーザーが抱く)最後の疑念」を取り払うために、2030年までに国内に30万台の充電ポイントを設置したいとしている。これに加えて、既に各方面から要求が提出されているように、集合住宅の駐車場における充電器の設置の設置を容易にするための措置を講じる(具体的には、「住居所有権法(WEG:Wohnungseigentumsgesetz)」を改正する)。これについては、アンドレアス・ショイアー(Andreas Scheuer)連邦交通大臣が、特に民間部門の充電インフラ設置の障壁の除去を目的とした、「電動車の急増を迅速化するための立法行為の計画」(„Gesetzesvorhaben zur Beschleunigung des Hochlaufs der Elektromobilität“)、を行っており、本件は現在、部門間調整の段階に入っていると説明した。