インドネシアで、2019年8月12日、「陸上輸送用のバッテリー電気自動車(EV)の普及に関する大統領令2019年55号」が制定された。全37条から成る本大統領令は、国内での電気自動車の普及とその産業促進を目的としたもので、具体的には以下の点について規定している。
- 陸上輸送のための電気自動車産業発展の促進
- インセンティブ付与
- 充電インフラの整備、およびバッテリー電気自動車のための電気料金規定
- バッテリー電気自動車の技術規定の達成
- 環境保護要件
本大統領令は即日施行され、今後1年以内に実施細則にあたる複数の大臣規則が制定される見込みである。なお原文は以下より閲覧可能。
https://setkab.go.id/wp-content/uploads/2019/08/Perpres-Nomor-55-Tahun-2019-Salinan.pdf
■ インセンティブの内容:
本大統領令で規定されている金銭的インセンティブは以下の通り。
- 完全ノックダウン、部分ノックダウンによるバッテリー電気自動車、または特定の量と期間を伴う主要部品の輸入における関税インセンティブ
- 奢侈品販売税インセンティブ
- 国税および地方税の免税または減税インセンティブ
- 投資のための設備、物品、および材料の輸入税インセンティブ
- 輸出時の金銭インセンティブ
- 生産プロセスに使用する主材料または副材料の輸入における、政府管理の輸入税インセンティブ
- 公衆の電気自動車充電ステーション(SPKLU)用機器の製造インセンティブ
- 輸出費用インセンティブ
- 研究、開発、および技術イノベーション活動、ならびにバッテリー電気自動車部品産業職に対する金銭インセンティブ
- 地方政府指定場所での駐車インセンティブ
- 公衆の電気自動車充電ステーションにおける充電費用軽減
- 公衆の電気自動車充電ステーションインフラ建設費用補助
- バッテリー利用電気自動車生産人材に対する職業能力証明
- バッテリー利用電気自動車産業企業、およびバッテリー利用電気自動車部品産業企業に対する、製品証明および/または技術基準
そのほか、非金銭的なインセンティブとして以下が挙げられている。
- 特定道路における利用制限の適用除外
- 中央政府および地方政府が特許を保有する、バッテリー電気自動車関連技術に関する製造権利の委譲
- 国家重要特定産業企業の物流または生産活動の継続または円滑化のための、産業部門の操業活動確保おまたはその指導
■ 部品調達:
バッテリー電気自動車のメーカーおよびその部品メーカーは、国内部品調達率を以下の通り段階的に引き上げなければならない。
二輪または三輪 | 四輪以上 | |
2019年 | 40% | 35% |
2020年 | ||
2021年 | ||
2022年 | 40% | |
2023年 | ||
2024年 | 60% | 60% |
2025年 | ||
2026年 | 80% | |
2027年 | ||
2028年 | ||
2029年 | ||
2030年~ | 80% |
■ 廃バッテリーの環境要件:
電気自動車から出る廃バッテリーについては、国内の関連法令にもとづきリサイクルまたは適切な処分が実施されなければならない。これらの措置は、認可を受けた廃棄物処理企業、電気自動車メーカーの工場、電気自動車部品メーカーの工場で行われる。これらのリサイクルや処分を行っている企業については、環境面での貢献について評価されることとなる。評価の詳細については、環境林業省が別途定める。
【EnviXコメント】
インドネシアでの電気自動車の推進に向けて、長らく議論されてきた法令がようやく制定された。ただし、「大統領令(Peraturan Presiden)」は政策的な意味合いの法的文書で、制度の大枠や方向性を示すものであるため、今後は、以下に挙げるような関連省庁が具体的な法令を出すものと見込まれる。
環境林業省 ⇒ 廃バッテリーのリサイクル、処分
工業省 ⇒ 電気自動車の部品に関する基準、調達率、電気自動車の研究開発
商業省 ⇒ 電気自動車およびその部品の輸出入
エネルギー・鉱物資源省 ⇒ 電気料金
(そのほか、財務省や運輸省も関連法令を制定するものと予測される)