アイルランド政府、自動車登録税にNOx排出量ベースのサーチャージを導入

アイルランド政府が2019年10月8日に発表した“Budget 2020(2020年予算)”では、自動車登録税を構成する新しい要素として、自動車の窒素酸化物(NOx)排出量をベースとするサーチャージ(surcharge)が導入されている(以下、これを「NOxサーチャージ」と言う)。

 

アイルランドの自動車登録税(VRT

VTR(Vehicle Registration Tax)は、アイルランド国内で自動車を登録する際に課される税金である。その税額は、≪OMSP(Open Market Selling Price、車両販売価格)に対する税率で算出される金額≫と≪所定の金額≫のうちいずれか高い方とされており、いずれも当該自動車の二酸化炭素(CO2) 排出量が多いほど税額が高くなるように設定されている。現行の値は、以下のアイルランド国税局(Revenue Irish Tax and Customs)のウェブサイトに掲載されているリストに示されている。

https://www.revenue.ie/en/importing-vehicles-duty-free-allowances/guide-to-vrt/calculating-vrt/applying-the-tax.aspx

なお、このうちディーゼル自動車については、2019年1月1日以降、一律1%のサーチャージがVRTに追加されている(以下、これを「ディーゼル・サーチャージ」と言う)。これについても、上記の国税局によるリストに具体的な数字が示されている。

 

NOxサーチャージの概要

新しいNOxサーチャージは、現行の「ディーゼル・サーチャージ」に置き換える形で、VRTの一部を構成することになる。

 

  • 適用開始:2020年1月1日
  • 対象車両:Aカテゴリー *の新車ならびに中古車(ガソリン車、ディーゼル車とも)

* VRTのAカテゴリーに含まれるのは、乗用車とミニバス(運転手以外の乗客数8名以内)。概してEUのM1カテゴリーに相当するが、一部のN1カテゴリーの車両も含まれている。

  • 税額:下表の通り1km走行あたりのNOx 排出量に応じて定められている。

 

NOx排出量 課税額(mg/kmあたり)
最初の0~60 mg/km 5ユーロ
次の61~80 mg/km 15ユーロ
残りの81 mg/km以上の部分 25ユーロ

(出所:VRT Ireland)

計算例:

  • NOx排出量43mg/kmの新型ディーゼル車: 5 × 43 = 215 ユーロ
  • 同23mg/kmの新型ガソリン車: 5 × 23 = 115 ユーロ
  • 同80mg/kmの旧型ディーゼル車: 5 × 60 + 15 × 20 = 600 ユーロ
  • 同40mg/kmの旧型ガソリン車: 5 × 40 = 200 ユーロ

 

なお、税額には、ディーゼル車では4850ユーロ、その他の自動車では600ユーロの上限(cap)が設定されている。

 

政府は2030年以降 新しいガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針

アイルランド政府は、2019年6月17日に発表した『2019年気候行動計画(Climate Action Plan 2019)』の中で、「2030年以降、新しいガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する」という方針を打ち出している。Budget 2020年には上記のNOxサーチャージの他にも、このための地固めとも言える数々の施策が含まれている。例えば、2019年10月8日から1トンあたりの炭素税価格が6ユーロ引き上げられて26ユーロとなったため、ディーゼル燃料とガソリン燃料の価格はそれぞれ、約2セントと1.7セント高くなる可能性がある。また、エレクトロモビリティ普及を目的とした予算は拡大され、これに関連する各種助成策が再編成された(詳細は、【過去の関連トピック】を参照)。

 

関連文書

  • アイルランド政府Budget 2020:

http://budget.gov.ie/Budgets/2020/2020.aspx

 

【過去の関連トピック】

  • EnviX海外エコカー政策モニタリング 2019年10月23日「アイルランド政府が2020年予算を発表、電動車への移行に向けた各種助成策を再編」

 

1ユーロ=約120.5円