2020年2月21日、マレーシアのマハティール首相は、貿易産業省(MITI)において国家自動車政策(NAP)2020を発表した。長らくその発表が待たれていたこのNAPの下、同国は自動車分野における製造、設計、技術開発、持続可能な発展に関する東南アジアのリーダーとなることを目指す。NAP2020は、次世代自動車(NxGV)、サービスとしてのモビリティ(MaaS)、および第四次産業革命(インダストリー4.0)にフォーカスし、新技術の開発の強化や特に中小企業を対象としたビジネス・雇用機会の創出、新しい製造プロセス・バリューチェーンの開発を通じて自動車産業のエコシステムを強化する内容となっている。
NAP2020の概要は以下のとおり。
・ 期間は2020年から2030年
・ 主テーマはコネクテッド・モビリティ
・ 以下の3つの方向性に特化して注力する。
(1) 技術・設計:NxGV、MaaS、インダストリー4.0のための重要コンポーネント・システムを開発する(自律型コネクテッドデバイス、インダストリー4.0技術、軽量素材、ハイブリッド・燃料電池車の開発を含む)。
(2) 投資:投資家からの具体的提案を対象に費用便益分析を行い、これに基づくカスタムメイドの投資優遇メカニズムを継続する。
(3) 市場の拡大:自動車や部品のみならず、アフターマーケット/サービス分野でも輸出を増大させる措置を導入する。
・ そのため、以下の3つの戦略を展開する。
戦略1:バリューチェーンの開発―国内メーカーのバリューチェーンの競争力を高め、将来的な自動車メーカーの基準と消費者のニーズの双方を満たす高品質かつ先端技術を備えた製品を追求する。
戦略2:人的資本の開発―現在および将来の自動車・モビリティ技術の需要に合わせて国内の人材を育成する。
戦略3:安全性、環境、消費者―排出量と車両の安全性の問題に対処するため、より環境に優しい新しい技術の採用を促進する。消費者の権利と保護の要素を導入する(メンテナンスやリコールプロセスなど)。
・ 上記を達成するための具体的な行動計画として、7つの分野(バリューチェーン、技術、人材、アフターマーケット、MaaS、ロボティクス、IoT)について固有のロードマップ(またはブループリント)が策定されている。
なお、これまでに幾度となく議論の俎上に上がってきた「使用済み自動車(ELV:End of Life Vehicles)」制度は今回導入されなかった。今回のものを含めた、これまでのNAPの主テーマの変遷は以下のとおりである。
NAP 2006(2006-2009年):サプライチェーンの統合(産業構造の改革)
NAP 2009(2009-2014年):投資の促進(国内自動車産業の能力・国際競争力強化)
NAP 2014(2014-2020年):環境・持続可能性(低燃費車のハブ国を目指す)
NAP 2020(2020-2030年):コネクテッド・モビリティ(デジタル産業革命の実現)