米マサチューセッツ州知事、気候変動法案に拒否権を行使――EV拡充も足踏み

2021年1月15日、マサチューセッツ州チャーリー・ベイカー知事は、最近可決された同州の気候変動に関する法案に拒否権を行使した。この法案は、2050年までに温室効果ガス排出量を州全体で正味ゼロにすることを定め、再生可能エネルギーの新たな目標と効率基準を盛り込み、環境正義の規定を州法に成文化するというもの。法案は現在、署名を求めてベイカー知事に提出されている。ベイカー知事は、議員への書簡で、「科学と詳細なデータ分析に裏付けられていない」義務づけを含む法案に関する問題に対処するには時間が足りないと述べている。

 

【法案の概要】

法案の主な概要は、以下のとおりである。

  • 州の気候変動に関する法律の見直し、温室効果ガスの排出削減、再生可能エネルギーによる雇用の創出、汚染のリスクが高い低所得者層の保護等を目的としたもの。
  • 特に法案の中心となるのは、2050年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするという目標であり、その手段として電気自動車(EV)やEV充電ステーションの導入等が挙げられている。
  • また、電力会社に洋上風力発電の購入を増やすよう指示し、2,400MWの洋上風力発電の追加開発を要求している。マサチューセッツ州の総目標を5,600MWにするとともに、2030年までに州の電力供給源となる再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(RPS)を40%に引き上げる。

 

【知事の意見】

ベイカー州知事は、書簡の中で拒否権を行使した理由を概説している。

  • この法案は、科学的なデータと分析に基づいたものではなく、「気候適応と回復力、手頃な価格の住宅開発の緊急の必要性、クリーンエネルギーの未来への費用対効果の高い公平な移行の確保など、本質的な問題を考慮していない」と述べている。
  • クリーンエネルギー調達の際に、地域的努力を損なう恐れがあること、気候変動の影響からコモンウェルスを保護する規定がないこと、そしてパンデミックが蔓延している最中では州の経済に影響を与える可能性があること等を挙げた。

 

【関連URL】

法案S.2995

https://malegislature.gov/Bills/191/S2995