米NHTSA、「SAFE自動車規則」廃止を官報で提案

2021年5月12日、国家道路交通安全局(NHTSA)は、官報において、2019年9月27日に公表された「より安全で無理なく買え、燃費のよい(SAFE)自動車規則パート1:1つの国家プログラム」(「SAFE規則」)の廃止を提案した。NHTSAは、エネルギー政策保全法(EPCA)の下における「SAFE規則」で公布された規制文と付録だけでなく、特定の州の温室効果ガス(GHG)排出基準やゼロエミッション車(ZEV)の義務化に関するプリエンプション(州の法規に対する連邦法規の優先)を含め、「SAFE規則」の前文に記載されていた当局の解釈的な記述を廃止・撤回することも提案している。

【経緯】

1975年、米国議会はエネルギー政策保全法(EPCA)を制定した。この法律は、他の目的とは別に、「エネルギー保全プログラム、および必要に応じて特定のエネルギー使用の規制を通じて、エネルギー供給を節約する」ことを目的としている。 EPCAは、自動車のエネルギー効率向上を促進するために、DOTに自動車の様々な分類について「規則によって平均燃費基準を規定する」ことを義務付けている。

2019年9月、NHTSAと環境保護庁(EPA)は、自動車からのGHG排出量の州規制とZEV義務化に関連する共同機関措置を最終化した。その中でNHTSAは、既存の州規制、特にカリフォルニア州などの連邦よりも厳しい規制を維持しようという動きを制し、プリエンプション(州の法規に対する連邦法規の優先)を発動する旨の記述を行っている。またNHTSAは、SAFE措置の一環として、大気浄化法第209条に基づき、GHG基準とZEV義務化による自動車排出規制を行うために、EPAがカリフォルニア州に与えていたウェイバー(プリエンプションの適用除外)を取り消した。この最終規則は、カリフォルニア州を含む多くの利害関係者によって直ちに連邦裁判所で争われ、その多くはNHTSAがプリエンプション規則を公布する権限を超えていると主張した。

2021年1月20日、バイデン大統領は「公衆衛生と環境を保護し、科学を復活させて気 候危機に対処する」大統領令に署名し、特に運輸省(DOT)とNHTSAに対して、SAFE規則を直ちに見直し、一時停止、修正、または取り消しを検討するよう指示。これを受け、NHTSAは、SAFE規則、特にNHTSAがSAFE 規則で発表した規制や見解の合法性と必要性について、包括的な見直しを行った。その結果、NHTSAは、SAFE 規則がCAFEのプリエンプションに関するNHTSAの法的権限を適切に行使していたかどうか、特にHTSAが法律の効力を持つ立法規則によってEPCAに基づくプリエンプションの範囲を定義する権限を持っていたかどうかについて、かなりの疑念を抱いているという。

そこでNHTSAは今回、成文化された規則、ならびにSAFE 規則に含まれるEPCAに基づくプリエンプションの解釈や見解を完全に廃止・撤回することを提案している。

 

【SAFE規則の規制撤廃案】

SAFE規則を包括的に再検討した結果、NHTSAは、連邦議会がプリエンプションの範囲を定義するための規則制定に必要な権限をNHTSAに与えたかどうかについて、かなりの疑念を抱いている。究極的には、「政府機関は、連邦議会による委任がない限り、プリエンプションについて宣言する特別な権限を持っていない」ということになる。

したがって、NHTSAは、その行動が間違いなく法的に許容される機関の権限の範囲内にあることを保証するために、各条項を完全に廃止することを提案している。これらの規則を廃止することは、NHTSAがEPCAに基づくプリエンプションの解釈を規則に成文化しないという、NHTSAの以前の慣行を取り戻すことにもなる。

 

NHTSAによる規制撤廃について、以下の3点の理由が挙げられる。

  1. NHTSAは、SAFE規則がEPCAに基づくプリエンプションに関する拘束力のある立法規則を発行することで、NHTSAの権限を超えてしまうことを懸念している

 

  1. 規則制定が有効であるためには、議会はNHTSAにEPCAに基づくプリエンプションに関する規則制定の権限を与えなければならない

 

  1. NHTSA は EPCA が NHTSA にプリエンプションに関する立法規則を発行する権限を与えていることに大きな疑問を抱いている

 

【SAFE規則におけるプリエンプションの解釈の廃止提案】

SAFE規則で公布された成文規定の廃止に加えて、NHTSAはSAFE規則の提案書と最終版の前文に記載されている、カリフォルニア州のGHGおよびZEVプログラムに関する見解を含む、付随する実質的な分析の廃止も提案している。

しかしながら、明確にしておきたいのは、NHTSAは、SAFE規則の立法案公告と最終規則の前文に含まれている可能性のあるEPCAに基づくプリエンプションに関する解釈上の立場を、それが成文にリンクしているかどうかに関係なく、廃止することも提案していることである。

現時点でEPAは、州の自動車GHG排出プログラムやZEV義務化とEPCAに基づくプリエンプションとの関係について、これらの解釈を別の見解に置き換えるのではなく、単に廃止することを提案する。

NHTSAによるプリエンプションの解釈廃止について、以下の2点の理由が挙げられる。

  1. 解釈規定を廃止することで、SAFE規則のすべての側面が廃止されたことが明確になる
  2. SAFE規則のすべての側面を廃止することで、この問題に関して、政府は白紙の状態に戻ることができる

 

【関連URL】

官報

https://www.federalregister.gov/documents/2021/05/12/2021-08758/corporate-average-fuel-economy-cafe-preemption