2021年6月9日、連邦先進電池コンソーシアム（FCAB：Federal Consortium for Advanced Batteries）は、「リチウム電池のための国家の青写真2021～2030（National Blueprint for Lithium Batteries 2021 – 2030）」を発表した。連邦先進電池コンソーシアムが作成したこの青写真は、気候変動の影響を緩和し米国内で公平なクリーンエネルギー製造業の雇用を創出するといった、国内のリチウム電池製造のバリューチェーンを構築するための投資の指針となるものである。また、バイデン政権の脱炭素化目標を支援しつつ、国家の長期的な経済競争力を確保し米国の労働者に高収入の雇用を創出するために、連邦政府機関が協力して取り組むべき5つの重要な目標と主要な行動が示されている。
【「リチウム電池のための国家の青写真2021～2030」について】
世界のリチウム電池市場は、今後10年間で5倍から10倍の成長が見込まれている。資源や支援が充実しているアジアや欧州の競合他社に利益をもたらすことになるのではという懸念から、米国の産業基盤は、この市場需要の大幅な増加に対応できるようにする必要がある。
この青写真は、安全な電池材料と技術のサプライチェーンを確立するための連邦政府機関の協力体制の指針として、以下のとおり5つの重要な目標を掲げている。
1. 商用・防衛用の重要な原材料について、原料・精製品へのアクセスを確保し、代替品を発掘：この目標は、米国のリチウム電池製造において、希少な原材料、特にコバルトとニッケルへの依存度を低減し、より強固で安全かつ弾力性のあるサプライチェーンを構築することである。米国政府の継続的な取り組みと同盟国との協力により、重要な原材料に関して信頼できる国内外の供給源を確保することは、最終的にリチウム電池のサプライチェーンでこれらの原材料を取って代わることと同様に重要といえる。
- 国内の電池製造需要に対応できる米国の材料加工基盤の成長を支援：現在、米国はほとんどのリチウム電池の原材料の加工を国際市場に依存している。
- 米国の電極、セル、パックの製造部門を活性化：電池のエネルギー貯蔵技術が大幅に進歩したにもかかわらず、セルとパックの製造の国内成長とオンショアには、電気自動車の導入に向けた一貫したインセンティブとサポートが必要だ。米国は、電極、セル、パックの国内製造を支援し、リチウムイオン電池の需要拡大を促進する連邦政策の枠組みを構築すべきである。
- 米国での使用済み製品の再利用と重要な原材料のリサイクルを大規模に行い、競争力のある完全なバリューチェーンを米国で実現：リチウムイオン電池のリサイクルは、原材料の不足を緩和し、環境の持続可能性を高めるだけでなく、より安全で弾力性のある、循環型の国内材料サプライチェーンを支える。現在、電気自動車用電池をリサイクルする際には、リサイクル業者は正味のエンドオブライフ・コスト（製品が寿命を全うした後に必要となるコスト）に直面しており、現在有害廃棄物に分類されている電池の輸送コストがエンドオブライフ・コストの半分以上を占めている。リチウムイオン電池のリサイクル素材の収集、選別、輸送、処理を成功させるためには、コスト削減を中心とした新しい方法を開拓しなければならない。また、リサイクルだけでなく、引退した電気自動車の電池セルを、系統電力の供給などの二次利用に再利用するための弾力的な市場を開拓し、電池セルの二次利用には、セルパックの適切な選別、試験、バランス調整を行うことが必要だ。
- 科学的な研究開発、STEM教育、人材育成を強力に支援することで、米国の電池技術のリーダーシップを維持・発展：次世代リチウムイオン電池用の新しい電極・電解質材料から、固体電池の進歩、新しい材料・電極・セルの製造方法に至るまでの研究開発パイプラインは、米国のリーダーシップを維持するために不可欠だ。このような研究開発は、強力な知的財産権（IP）保護と、半導体産業で確立されたような官民の研究開発パートナーシップを通じた研究室から市場へのイノベーションの迅速な移行によって支えられている。
【FCABについて】
FCABは、米国政府機関の先進的な電池への取り組みに協力・連携を促し、国内の健全なエコシステムの構築を目指している。FCABは、エネルギー省、国防省、商務省、国務省が主導しており、政府内の多くの組織が参加している。
【関連URL】
National Blueprint for Lithium Batteries 2021–2030