ドイツSpiegel Onlineの2019年2月1日付の記事によると、2019年1月以降、EUの新車CO2排出規制の枠組みにおける自動車メーカー別の新車の二酸化炭素(CO2)平均排出量の計算に、EU非加盟国であるノルウェーで登録された新車の値も組み込まれるようになった。その法的根拠は挙げられていないが、Spiegel Onlineはこれを欧州委員会広報担当官による確認を得た内容として報道している。持続可能な交通を主題とする大手NGOであるTransport & EnvironmentのJulia Poliscanova氏は、これにより、「自動車メーカーにとっては間違いなくCO2排出目標の達成が容易になる」とし、「閾値の効力を弱めることになるのは問題だと考えている」と話している。
電気自動車(EV)大国として知られるノルウェーでは、すでに新車登録台数全体の3分の1がEVとなっている。とは言え、その母数である新車登録台数は15万台に過ぎず、EU全体の1520万台と比べると、その影響は取るに足らないように見える(数値はいずれも2018年実績)。しかし、同国の新車の平均CO2排出量はわずか71 g/kmである。そして、当国で売れ行きが好調な電気自動車(EV)は、EUの規制枠組みではCO2排出量0 g/kmとしてカウントされるだけでなく、超低排出自動車向けのインセンティブである「スーパークレジット(super credits)」を通して、当面は2台分としてカウントされる。このため自動車メーカーにとって、ノルウェーのEV登録台数をCO2排出量の計算に含めることができるのは十分に魅力なことなのである。一例として、BMWの場合、同社が昨年一年間にノルウェーで販売したEVモデル「i3」6000台弱を算入するだけで、同社の平均CO2排出量は約1g減少する。
EUでは2021年までの新しい乗用車及び小型商用車の平均CO2排出目標値は95g/kmに設定されている。各メーカーの平均CO2排出量が基準値を超過した場合、当該メーカーは登録自動車一台ごとに1g/km 超過につき95ユーロの罰金を支払わなければならない。例えばフォルクスワーゲン(VW)の場合、仮に同社の新車平均CO2排出量が、2020/2021年向け排出目標値(specific emissions target、対象車両の質量等を考慮してメーカーごとに設定される)である98gを達成できずに99gであったとすると、グループ全体でおよそ3億8000万ユーロ(約474億円)の罰金が科されることになる。わずか1gの超過が多大な財政負担につながるのである。
ちなみに、EUの新車CO2排出規制は次なる段階を迎えようとしている。昨年12月にはEUの2030年までの新しい乗用車及び小型商用車のCO2排出規制に関する審議が終了し、乗用車向けの2030年目標値は、2021年基準比で37.5%削減と決められた。