多くのEU加盟国に遅れをとったが、まもなくドイツでも、電動キックボードなどの小型パーソナル電気自動車(PLEV:Personal Light Electric Vehicles)の公道走行が認められることになりそうだ。ドイツ連邦内閣は2019年4月3日、「電動小型自動車令」(eKFV:Elektrokleinstfahrzeuge-Verordnung)を可決した。同法は、5月17日に連邦参議院の承認が得られれば、すでに今夏にも発効する予定である。
EUレベルでは、Lカテゴリー車両(二輪車、三輪車およびクアドリサイクル)の型式認証要求事項を定める法律として、規則(EU)No.168/2013が2016年1月に発効している。しかし、同規則では、「セルフバランシング車両(self-balancing vehicle)」(以下の注参照)と「座席なし車両」がその適用範囲から明確に除外されている。一方、これらの車両に対するニーズは高まっており、このために国内法レベルでの規制が必要となっている。
注)規則(EU)No.168/2013の定義によると、「self-balancing vehicle」とは、本来備わっている性質としては不安定な釣り合い状態(unstable equilibrium)をベースとしており、バランスを維持するために何らかの補助的制御システムを必要とする自動車コンセプトのことである。
ドイツ国内で公道走行が認められているPLEVは、現在、「モビリティアシスタント令」(MobHV:Mobilitätshilfenverordnung)で規定されており、セグウェイ(Segway)などの特定のセルフバランシング車両に限定されている。電動小型自動車令はこれを、電動キックボードをはじめとする「座席なし電動車両」や「セルフバランシング電動車両」にも拡大し、これによって持続可能なモビリティを促進するものである。新法の概要を以下にまとめる。
- 対象車両要件
- ステアリング用あるいはサポート用のハンドルを備えていること
- 構造に応じて、最高速度が6~20 km/hの範囲内であること
- 最大出力:500W(セルフバランシング車両の場合は1400W)
- 車両力学上の最低要件を満たしていること。⇒ すなわち、一般交通安全性能、ブレーキ性能、制御性能、各種点灯装置などを備えていること
- 対象車両区分
- 最高速度12 km/h以下の車両
- 歩道、歩行者/自転車専用道、歩行者天国を走行することができる。
- 利用者年齢条件:12歳以上
- 最高速度12 km/h以上の車両
- 原則として、自転車専用道ならびに同専用レーンを走行しなければならない。
- 利用者年齢条件:14歳以上
- その他
- 車両保険加入義務あり。車両本体に貼付するラベル型の保険証書を導入予定。
- 運転時のヘルメット着用義務はなし。
- 車両登録義務はなし。
今後の展開とスケジュール
電動小型自動車令は、2019年5月17日に連邦参議院による承認が下りた場合、その後すぐに発効の予定。なお、同法の発効に伴い、モビリティアシスタント令は廃止される。
関連文書
2019年4月3日発行ドイツ連邦内閣プレスリリース: